健康栄養学科

人と社会の健康を担う、管理栄養士のちから。

栄養生理学研究室(金賢珠 教授)

脂質栄養の研究により健やかな超高齢社会への貢献を目指す

日本における高齢化率は2020年に28.8%(21%以上で超高齢社会)に達し2060年まで上昇傾向が続くと予想され、将来の平均寿命は、男性が84.95年、女性が91.35年だそうです(令和2年度版高齢社会白書、内閣府)。このような現状から、老化によるがんや虚血性心疾患、2型糖尿病を含む代謝性疾患など慢性疾患の重症化を予防するための研究は、高齢者のQOL(生活の質)の向上に限らず、家族や地域の介護負担を軽減し、健やかな社会の構築に役に立つと思います。当研究室では、脂質栄養の研究により超高齢社会に貢献することを目指しています。

①魚油とチアゾリジン薬の併用による糖・脂質代謝の改善とその機序を解明する

今までの研究で、魚油に豊富に含まれているn-3系脂肪酸のEPAとDHAが脂質代謝関連遺伝子の発現に強く関わることを明らかにしました。特に、高齢糖尿病モデルマウスを用いた実験では、糖尿病治療薬(チアゾリジン薬;ピオグリタゾン)と魚油の併用がピオグリタゾン服用時の副作用(皮下脂肪の過剰な蓄積や体重増加)を軽減し、糖代謝改善効果を高めることを示しました。今後は、これらの有効作用に対する性差や様々な食事条件による影響を解明します。

②n-3系脂肪酸による老化軽減の作用を調べる

魚油に豊富なn-3系脂肪酸は、糖・脂質代謝の改善や認知能力への作用が報告されており、老化に伴う様々な代謝性疾病の重症化予防に有効であることが考えられます。当研究室では、魚油以外のn-3系脂肪酸の供給源としてエゴマ油に着目し、老化関連遺伝子やたんぱく質発現への影響を調べて、n-3系脂肪酸の老化軽減への作用を解明します。

この研究室を希望する方へ

韓国と日本で栄養学を学び、研究したことは私の強みです。栄養学や研究はもちろんのこと、日本語もおぼつかない私を少しずつ成長させてくれた糧は、大学や大学院での学びに加え、多様な方々との出会い、研究での喜びや失敗、異なる食文化との関りなど、様々な「経験」だったと思います。

当研究室では、栄養素や食品成分、そして食事のバランスが人々の健康や疾病にどのように関わっているかを学習し、研究しています。また、日本や韓国の食文化に関する研究を立ちあげて、食べ物と栄養のさらなる可能性を探る予定です。「経験する」ことを選べる方、栄養学に誠実である方、何より、共に悩み、学べる方に出逢うことを楽しみしています。