科学が進むにつれ、幼児教育にも科学的アプローチがされ始めています。ここでは子供の嗜好(しこう)について、科学的に分析します。まず幼児期に何でも食べられる子とそうでない子がいますが、それには遺伝と環境の2つの要因が絡み合っています。遺伝、つまり生まれ持ったものは子供の嗜好にどのように関係するのでしょうか。味覚は、食べ物を口にした時、物質が分解され、唾液と混じって物質が溶け出し、それが味孔に伝わり、脳に味を知らせるメカニズムになっています。生後3日の乳児に甘味、苦味、酸味を口にさせる実験を行ったところ、異なる反応を示し、生まれながらにして好きな味と嫌いな味があることが分かっています。またスキャモンの発育曲線を見ると、幼児期の2~3歳頃から自我が強くなるので、好き嫌いとして嗜好がはっきりしてくる時期と言えます。しかし、こういった要因だけで嗜好は決まるのではありません。環境の影響も大きく、食に関心があり食べ物を大切にする家庭の子供ほど、好き嫌いが少ないことが分かっています。実際に大豆を例に、幼稚園で園児に栽培活動など大豆に関する教育を行ったところ、大豆に親しみ大切にしようという意識の改善につながりました。このように科学的根拠に基づいて子供の嗜好を考えていくと、その真意や対策が見えてきます。管理栄養士をめざす場合、栄養学的な知識だけではなく、科学的根拠に基づいて新しい知見を見取る力、多面的に対象者を理解しようとする力も身に付けておくことが求められます。

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大瀬良 知子准教授食環境科学部 健康栄養学科 応用栄養学研究室

  • 専門:衛生学
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