「芽胞」とは、細菌の生育環境が悪化した際に形成される耐久細胞で、胞子やスポアとも呼ばれます。熱や薬剤に強く、数分間の煮沸やアルコール消毒程度では死滅しません。そのため、食中毒の原因の約9割は微生物によるものですし、芽胞形成菌による食中毒事件も多く、食品の腐敗も大きな問題となっています。さらに、炭そ菌などは生物兵器にも使われる恐れがあるため、芽胞形成菌をいかに制御していくかは大きな課題の一つです。過酢酸製剤は一部の芽胞を除き、すべての微生物を殺滅できますが、耐性の高い微生物は衛生管理上の問題となっています。そこで、高い過酢酸製剤耐性を持っている芽胞形成細菌のメカニズムについて、同じ食環境学部の佐藤順先生と共同研究しています。
芽胞は悪いことばかりするわけではありません。納豆菌の中にも細菌芽胞はありますし、生物農薬や土壌改良にも使われています。また、何十万年も安定して生存できるという特色もあるので、発想次第ではさらに有効に使うことができるでしょう。

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藤澤 誠准教授食環境科学部 健康栄養学科 分子食品衛生学研究室

  • 専門:微生物学、分子生物学、生体膜機能学

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