生命科学科

いのちのしくみと、いのちを育む環境を科学する

生態リスク学研究室(竹下和貴 准教授)

生態系かく乱要因のリスク評価とその適切な管理に向けた施策の提案

環境中には、生態系からもたらされる様々な恩恵を損なわせるリスク要因が多数存在しています。例えば、化学物質の中には生物の個体数や種数の減少を招いてしまうものが存在しており、また、在来種か外来種かを問わず、生態系のバランスを乱してしまうような動植物種も多数報告されています。そして、このような生態系の危機には、私たち人間の社会経済活動がそもそもの原因であるケースが少なくありません。そのため私たちは、それら生態系かく乱要因のリスク(生態リスク)を、責任もって管理(マネジメント)していく必要があります。

私たちの研究室では、河川、森林、都市といった様々な種類の生態系に潜むかく乱要因を対象に、そのリスクの大きさの評価と適切な管理施策の提案を目指して、野外調査を通じて得られたサンプルの分析やデータの解析などに取り組んでいます。当研究室で現在取り組んでいる研究テーマの大枠は下記の通りです。

  1. 河川における重金属類の生態リスク評価(対象生物は底生無脊椎動物)
  2. 河川調査ビッグデータを用いた化学物質及びその他人為的環境かく乱要因の生態リスク評価
  3. 人間との軋轢が生じている中・大型哺乳類の生態に関する基礎調査

これらの研究テーマの遂行にあたっては、フィールドワーク、フィールドワークで採取したサンプルの実験室内での分析、そしてプログラミング言語を用いた統計モデリングや数値計算などを適宜取り入れています。また、国内外の研究者との共同研究も複数実施しています。

河川での底生動物相調査
カメラが捉えたアライグマ(Procyon lotor)
カメラが捉えたタヌキ(Nyctereutes procyonoides)

この研究室を希望する方へ

私が研究に取り組む上での一番のモチベーションは、自然に対する責任感です。私自身のこれまでの主な研究対象(テーマ)は、森林生態系における大型哺乳類(ニホンジカ)や河川生態系における重金属類の生態リスク(調査対象種は水生昆虫)ですが、「シカが好き」や「昆虫が好き」で対象種を決定したわけではありません(むしろ昆虫は苦手な方かもしれません)。研究室に所属した学生には、私の研究対象種にはあまり縛られずに、自らが重要だと考える生態リスク要因を主体的に見つけ出してほしいと考えています。実際に、本研究室に所属する学生の卒論テーマは、下記の通り様々です。
野外調査をベースに研究計画を立てることが多い研究室ですが、研究発展のために必要であれば、実験室での分析もプログラミング言語を使った統計解析にも貪欲に取り組みます。自然に対する責任を果たすためであればどんな技術でも習得してやるという気概に満ちた方をお待ちしています。

本研究室に所属する学生の卒論テーマの例

  • 河川水の生物化学的酸素要求量(Biochemical oxygen demand)の曜日・時間依存的な変動の評価
  • 渡良瀬遊水地谷中湖におけるイノシシ(Sus scrofa)の食性の季節的変化
  • 三角形の公園が生物多様性問題を丸く収める?利用者の生物に対する関心を変化させる街区公園の特徴の検討