生命科学部では、教職課程で必要な科目を履修し、中学校と高等学校の理科一種免許が取得できます。芥川龍之介の短編『羅生門』を題材に、東洋大学生命科学部の学生として、哲学に基盤を置きながら、生命の尊重と道徳教育を一緒に考えていきましょう。学習指導要領においては、中学校「道徳科」の授業で22の内容項目について学習すると定められていますが、どれかの価値項目を守ろうとすると、他のどれかを犠牲にしなければならない場合があります。『羅生門』では、「生命の尊さ」と「遵法精神や公徳心」の二つの道徳的価値の対立が出てきますが、道徳の授業においては、登場人物の気持ちが大きく揺れ動くところが、発問を出すポイントになります。東洋大学の学生としては、与えられている判断だけではなく、哲学の方面での言葉をもとに、登場人物のさまざまな事情を多岐に考えさせて思考活動を進めていくことが、有効な指導法の一つであると思います。学習指導要領が変わり、私たちはこれから「考える道徳」「議論する道徳」を念頭に置いて、生徒たちを指導していくことになります。新しい学習指導要領では、「道徳の時間」が「特別の教科 道徳」となりましたが、「いい行いをしよう」ということに関しては配慮された教育が展開される予定です。一方で、「悪い行い」に対してどういう態度を取るのかといったところには課題を残しています。みなさんも今後指導者として働いていく立場になりますが、道徳の教科書や学習指導要領だけで考えていくのではなく、大学で学んだ哲学を心の中に保持しながら、一緒に若い人たちの指導にあたっていただきたいものです。

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角谷 昌則教授生命科学部 生命科学科 教育学研究室

  • 専門:教育政策・道徳教育、比較教育学
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