2018年1月10日

人(哺乳類)の脳は、学習するという面では高い柔軟性がありますが、損傷や老化によって神経細胞が失われた場合や、生殖に関する神経回路が変更できないなど、機能回復については柔軟性が低いと言えます。それに対して魚の脳は、学習能力は低いものの、損傷の回復が早く、生殖に関する神経回路の変更など、柔軟性が高いと言えます。魚類の損傷の回復が早いのは、魚の脳に、広い範囲に神経を作り出すことができる“神経前駆細胞”が多く存在しているということが挙げられます。哺乳類でも、胎生期には神経前駆細胞が脳に広く分布していますが、成体になると、海馬、脳室下帯といった一部に局在するのみとなります。また、生殖に関する神経回路の変更については、例えば群れの中で一番大きい個体がオスになり、その群れからオスがいなくなったら、次に大きいメスがオスになるという、成長や環境によって性転換する種類や、人為的に雄性ホルモンを注射すると、成熟したメスがオスの行動をするようになる種類もいます。つまり、脳も性転換をするということです。これは、脳に存在するいろいろな種類のニューロン(神経細胞)の中で、オスの生殖行動を調節すると言われている“GnRH3(生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン)産生ニューロン”が、ホルモンによって増加したことで、神経の新生が起きるからだということがわかりました。こうした発見は、面白い!というところから出発しています。その気持ちを大切に、生き物の不思議さや面白さを知り、人や医療などへの応用など、これまでと違う発想につなげていきましょう。

cf-staff-金子_律子

氏名 (姓名は半角スペース区切り)
金子 律子
職名
教授
学部
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学科・専攻
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サムネイル写真
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フリーテキスト (専門、等)

神経機能制御研究室
専門:脳に影響を及ぼす様々な因子とその作用メカニズムを個体レベルから分子レベルまで研究

※掲載内容は、取材当時のものです

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