中南米のイスパニョーラ島には、1つの島に2つの国が存在しています。東側にドミニカ共和国、西側にハイチがあり、両国とも人口は1,000万人程度です。しかし、2つの国は隣国で共通点が多いものの、その経済状況は大きく異なっており、格差はデータで比較してみると明白です。例えば経済指標の1つであるGDP(国内総生産)を人口で割り、一人当たりの生産量を算出して比較してみると、ドミニカ共和国の方がハイチより高くなっています。また、識字率の高さ、平均寿命や平均教育期間の長さなどの指標を比較しても、ドミニカ共和国の方が、より多くの人が読み書きをすることができ、より長く生き、より長く教育を受けていることが見て取れます。経済の発展度合が生活に関する指標にも反映されているのが分かるでしょう。では、なぜ両国はこのように対照的になったのでしょうか。これは、ドミニカ共和国はアメリカにとって観光地であり、主な輸出の拠点でもあるため発展を遂げた一方で、ハイチは50年間景気が低迷しており、西半球の最貧国として、重大な統治問題や優秀な頭脳の流出、貧困の罠(貧困の連鎖)など多くの問題を抱えたままになっているからだと推察されます。このように2つの国について調べる時、さまざまなデータを解析し、比較することは重要です。この講義では今後、「歴史」「データ解析」「経済理論」「開発経済学」などの観点からも検証していきます。そこで、みなさんもまず、好きな2つの国を選んでGDPデータを比較してみましょう。そうすると、この講義の内容をより深く理解することができるでしょう。

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久松 佳彰教授国際学部 国際地域学科

  • 専門:開発経済学、中南米地域研究
  • 掲載内容は、取材当時のものです