フードデータサイエンス学科

データで、新たな食の可能性を開く。

食料・資源経済学研究室(竹田麻里 准教授)

持続可能なフードシステム構築のための資源環境管理

食料生産にとって欠くことのできない農地や水資源、周辺の自然環境の管理には2つの方向性の異なる課題があると考えています。
第1は、農業に利用されることによる自然破壊の問題です。近代農法は飛躍的な生産性向上の反面、土壌劣化、水質汚染、生物の生息環境破壊などを引き起こしました。1990年代が転換期となり、有機農法や環境調和型農法が推進され、近年ではさらに、気候変動と生物多様性が大きな柱となり、カーボン・ニュートラル(脱炭素)やネイチャー・ポジティブ(自然再興)といった取組みが進んでいます。
そこで、食料の分野からの取組みとして、例えば生態系サービス支払に関連する研究を行っています。生態系サービスとは、農地や水資源、そして生物を含む自然資本からフローとして得られるもので、食料生産、木材生産といった一般に市場取引されるものだけでなく、水質浄化、洪水調整、気候調整、美観、レクリエーションなど通常は「市場が存在しないサービス」について、受益者が供給者に適切に支払い等の貢献を行うことで、サービスの供給を確保するものです。広い意味では、たとえばエシカル(倫理的)消費のように、消費者が社会課題の解決を目的に行う消費にも注目して研究を行っています。
第2は、農業利用されなくなることによる自然へのインパクトやフードセキュリティの問題です。これはかつて農地や里山として人が関わることによって維持されてきた二次的自然にとって特に問題です。世界では、基本的に資源の過剰利用が問題となっているため見落とされがちですが、日本のような人口減少かつ食料自給率の低い国にとっては重要な課題です。たとえば、人口減少・高齢化が進む山間部の農地を誰がどこまでどのように管理すべきか、また、取水口から末端まで分割不可能なシステムである農業水利施設を誰の負担でどこまで維持管理するか。フィールドワークによる実態調査や、生態学・水文学・社会学などの分野を横断した議論に注目しながら研究を行っています。

この研究室を希望する方へ

食料生産における資源環境問題は、資源量や利用状況などのデータが十分に把握されていなかったり、一元化されていなかったりすることが長らく制約となってきました。しかし、いまは衛星データやドローン、センサー技術などにより様々なデータが取得できるようになりました。ただ、それをどのように活用していくかがまさに問われていると思います。
フィールドワークで現場の実態を知り、課題を把握し、そしてどのようなデータを収集し、どのように分析すれば課題に迫れるのか。経済学や統計学、空間情報科学、データ分析方法の基礎を学びながら、現場と理論とデータを往復する。簡単には方向性が見えないこともありますが、そこに好奇心や探求心がわいてくる方、自然環境やそれにかかわるコミュニティの持続可能性に興味がある方と出会えることを楽しみにしています。