食料市場では、農作物を輸入する際に関税がかけられることがあります。例えば農産物にかかる関税の引き下げのような政策が行われた場合、国内の生産者や消費者に影響を及ぼすため、事前にシミュレーション分析をする必要があります。そのときに重要なことは、データを適切に集計し、消費者や生活者の行動を正確に推定することです。

従来の経済理論では、個別の商品に対して、消費者が自身の予算と商品の価格を前提に自分の満足感が最も高くなるように商品を購入する「消費者の合理性」を前提に分析が行われてきました。しかし実際にデータ分析を行う際は、個別の商品に対するデータではなく、集計されたデータしか手に入らないケースが多く、それを基に分析した研究がほとんどでした。これらの研究では、集計の仕方を間違えると消費者の行動を誤って推定してしまう可能性があります。

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そこで近年、「POSデータ」(Point of Sales)という非集計データが注目されています。POSデータとは、商品を購入するときにバーコードによって得られるデータで、いつ・どこで・何が・いくらで・どのくらい売れたのかといった、個別商品の詳細なデータです。

経済学研究室では、このPOSデータを用いて、非集計データから集計データを作成し、消費者の合理的な行動について検証しました。その結果、集計データに対する消費者の購買行動は、完全には合理的とはいえないものの、そのエラーの程度は小さいことが明らかになりました。POSデータを用いた研究を進めることで、消費者や生産者の行動をより正確に推定できるようになります。こうした研究の成果は、食料市場分析の精度を向上させ、政策立案に役立つ情報となることが期待されています。

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佐藤 秀保准教授食環境科学部 フードデータサイエンス学科 経済学研究室

  • 専門:農業経済学
  • 掲載内容は、取材当時のものです