フードデータサイエンス学科

データで、新たな食の可能性を開く。

食料消費行動研究室(柴田浩文 講師)

食品選択行動における情報価値と計測手法に関する実証研究

近年、日本においてSDGsの取り組みが進展したことで、私たち消費者は食品の持続可能性を購入の判断基準の1つとして考えるようになりました。食品に係る持続可能性には、環境負荷の低減や動物福祉を考慮した適切な飼養管理などが挙げられます。これらの食品は、海外(特にヨーロッパ)において市場流通が進展しており、消費者にも高評価です。一方、日本では生産消費ともに発展途上の段階であり、それらの価値を検証している状況です。そのため、私の研究では、主に畜産(特に酪農)を対象として、その価値を計量経済学の手法を援用しながら「見える化」することに取り組んでいます。これまでの研究では、非遺伝子組換え飼料牛乳、抗生物質無添加飼料牛乳、放牧牛乳、地域特性情報が付与された和牛肉の経済価値について明らかにしました。
また、上述のような経済価値を明らかにする際、消費者に意識調査を実施しますが、その調査で得られた結果には仮想バイアスという問題が発生することが知られています。この問題は意識調査時の仮想的な評価が実際の購買時の評価よりも高く評価されてしまうことです。つまり、仮想バイアスの対策をしていない意識調査で得られた結果は現実から乖離した信頼性の低いものとなってしまいます。マーケティング分野の先行研究では、行動経済学や実験経済学の知見を活用することで、このバイアスを低減することが明らかとなっていますが、農業経済学分野での応用はまだ少なく、その効果は未知数です。そのため、私の研究では、食品の意識調査を行う際、実際の購買時の評価が得られるような調査手法の検証も行っています。