フードデータサイエンス学科

データで、新たな食の可能性を開く。

経済学研究室(佐藤秀保 准教授)

牛乳・乳製品市場の経済分析

日本では乳製品の輸入に比較的高い関税がかけられており、国内消費者はその分多くの支払いをして輸入品を購入する必要があります。一方、グローバル化が進展する中で、世界的には関税の削減・撤廃が推進されています。もし、乳製品への関税が撤廃されることとなれば、安価な輸入品が国産品の需要の一部にとってかわり、その結果国内酪農家へ及ぶ影響が懸念されます。また、乳製品の原料である生乳の生産構造は北海道と都府県で大きく異なります。乳製品の輸入量が増大することで、乳製品向けの生乳を多くつくる北海道が牛乳を増産し、もともと牛乳を多く生産していた都府県の供給シェアを奪うような変化も考えられます。本研究では、経済需給モデルを構築し政策シミュレーション分析を行うことで上述の影響を定量的に明らかにしようとするものです。

飲食料品POSデータを用いた経済理論の検証

コンビニエンスストア、スーパーマーケットやドラッグストアなどで商品を購入するとき、商品についているバーコードの読み取りが行われることがふつうです。このとき、いつ・どの店舗で・何が・いくらで・どれだけ購入されたかが記録されます。この売上データはPoint-of-sale(POS)データとよばれます。本研究では、全国4、000店舗以上の加工食品・飲料品のPOSデータから経済理論の妥当性を検証するものです。より具体的には、標準的な消費者理論では個別製品に対しての購買行動に「合理性」が仮定されています。しかし、現実のデータを用いた需要分析の際には、個別製品をより大きなカテゴリに集計した集計製品をつくって分析を行うことが一般的です。このとき、個別製品の購買行動に対して仮定した「合理性」が集計製品に対しても引き継がれるのか否かを検定し、財集計が経済理論と整合的かどうかを明らかにすることが本研究の目的です。

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最近は、データ分析に使用する統計ソフトウェアの発達が目覚ましく、簡単な操作で高度な分析を行うことが容易になりつつあります。一方で、高度で最新の手法であるからよい研究であるわけでは決してありません。データ分析で最重要であるのはまず解決すべき問い(Research Question)を明確に立てることです。また、データ分析の労力のほとんどは、分析の前段階のデータ収集・加工・要約・グラフ化に費やされます。派手で格好よさそうな分析にとびつかず、丁寧に根気強く課題とデータに向き合うことのできる精神力・忍耐力が必要です。