フードデータサイエンス学科

データで、新たな食の可能性を開く。

食料経済実験研究室(中島亨 教授)

食品に対する消費者需要の解明

近年の食料価格の上昇や食の簡便化志向、健康志向などを背景とし、消費者の食品に対する需要が大きく変化しつつあります。食品を生産・販売する企業や農家が収益性を改善したり持続可能な経営を実現したりするためには、生産技術の改善だけでなく、販売戦略を改善することがますます重要になっています。当研究室では、食品に対する消費者需要を解明することで、食品の生産者が採用すべき販売戦略に対して提言を行うほか、食料政策のあり方についても提言を行い、限られた資源を有効に使用して持続可能な社会を実現する一助となることを目指しています。
ここでいう消費者需要の解明とは、単に消費者の好みを明らかにするだけではありません。どのような消費者が、どのような食品に対して、どれだけお金を出してもよいと考えているかを明らかにします。これらを明らかにするためには、食味などの官能評価だけでなく、経済学の考え方にもとづいてデータを収集し分析することが必要です。
当研究室では、データを収集するためにアンケート調査や、消費者の実際の消費行動を実験的に把握する経済実験を行います。経済実験を行うことで、より消費者の実際の行動に近いデータを集めることができ、データの信頼性を向上させることができます。最近では、バーチャルリアリティ(VR)を用いて日常的な買い物の場面を再現し、VRの中で消費行動を観察する取り組みも行っています。VRを用いることで、より多様な状況で、より経済的に、より多くの人のデータを収集することができます。
収集したデータは、統計学や機械学習の手法を使って分析にかけられます。そうすることで、客観的な証拠を提示することができます。このようなエビデンス・ベースドな考え方は、科学研究において必要であるだけでなく、社会に出てからも役立つものです。特に、人々の行動や態度を科学的に分析するスキルは、企業のマーケティング部門で活用できるだけでなく、公官庁で政策策定を行う際にも有用です。

この研究室を希望する方へ

当研究室は、食品に対する消費者需要に関する研究を主として行っています。このテーマに関心がある方はもちろん、このテーマの研究を通じて身に付けられることに関心がある方の参加を歓迎します。特に、当研究室の研究では、経済実験やアンケート調査等によりデータを収集し、統計分析や機械学習の手法を用いて分析を行います。ここでは、明らかにしたいことから必要な分析手法を特定し、その分析に必要なデータをどのように収集したらよいかを逆算して考えた上で、実際にそれらをひとつずつ着実に実行することが必要です。そのため、論理的思考力や想像力、行動力のほか、予想外の事態や困難に直面してもポジティブに考え、それらに対処する忍耐力やレジリエンス(回復力)が必要となります。これらの力を伸ばしたい、または、足りないものを身に付けたい、と強く思う方の参加を期待しています。