フードデータサイエンス学科

データで、新たな食の可能性を開く。

言語習得・言語分析研究室(坂東貴夫 准教授)

読解実験に基づく文法的誤りの客観的評価

第二言語習得研究の分野では、長年にわたり、外国語を学ぶ学習者による誤りについて分析が行われている。先行研究では、誤りが母語の影響を受けたものか、母語の影響を受けたものではなく普遍的におこるものかという分類や、意図が理解不能になってしまうような全体的な誤りか、意味理解にはあまり影響を及ぼさないような局所的な誤り(例. 三単現-s)かというような分類がなされてきた。そして、コミュニケーションに支障をきたさないような局所的誤りはそのままにしてよいが、意図が理解できなくなるような全体的誤りは訂正しなければならないというような教育上の指針を示す先行研究も存在する。加えて、それぞれの誤りをどのように評価するかに関する研究も多く行われており、「理解可能性」・「深刻度」・「自然度」といった点から各誤りの比較や、母語話者と非母語話者の評価の比較等もなされている。このように、第二言語習得研究の分野では、学習者による誤りを分析することで学習者の習熟度や特徴を明らかにしようとする試みだけでなく、誤りを評価することで学習や教育に役立てようという試みが続けられている。
しかし、このような誤り評価に関する研究は、母語話者や学習者・教師等を対象にしたアンケートによる主観的な判断を基にしているものがほとんどであり、客観的なデータを基にした議論が不十分である。そこで私が現在取り組んでいる研究では、文法的な誤りを含む文を読む実験(自己ペース読み課題)を行い、読解時間を基準とした誤りの評価を試みている。読解時間を複数の文で計測することで、誤りが存在する文でのみ読解に影響するのか、文境界を越えて他の正しい文の読解にも影響が及ぶような深刻な誤りかというような点を調査している。そして、いくつかの文法的な誤りについて、読解活動全般を阻害する可能性がある重大な誤りであるか否かを明らかにし、先行研究の結果と比較検討していく。本研究で得られる結果が、将来的に外国語教育の向上に繋がることを期待している。

この研究室を希望する方へ

私の専門分野では、言語表現に対する反応時間の測定やテキスト分析によって得られたデータについて、その分析結果を論理的に議論することが求められます。そのためには、得られたデータに対して先入観や偏見を持たず、フラットな視点で考えることが必要です。データに基づく議論を通して、思考力・想像力を伸ばしていきたい学生を歓迎します。
言語データの分析は、言語学分野に限ったものではありません。例えば、お店のクチコミデータや商品レビューを分析すると、評価を示す星の数とクチコミで用いられる表現には関係性があること、その関係性が地域差や性別・年齢等の変数に影響を受けることが分かります。このように、言語データや言語表現に対する反応データは、個人や集団が持つ特性が反映されるものであり、延いては文化の分析にも繋がる可能性があることも想像できるでしょう。言語関連データを用いて、自分が興味を持つ対象について考察を深めたい方はこのゼミに来てください。
(*このゼミでは卒業論文作成は行いません。)