電球が発明された19世紀後半以降、地球の夜は急速に明るくなり、生物のリズムが破壊されようとしています。人工衛星で撮影された画像を見ると、先進国を中心に莫大な量の照明を使用していることが分かります。照明は生活に不可欠なものでありますが、過剰または不適切に設置された照明により、「光害(Light Pollution)」という環境問題を引き起こしかねません。「光害」は、大気汚染などと同様に、環境問題の一つとしてとらえることができますが、一般の人にはあまり認識されていません。2016年に発表されたイタリアの研究グループの論文によると、「光害により、世界の人口の3分の1以上の人は住んでいるところから天の川が見られない」ということが分かりました。これは、先進国である日本ではおよそ7割に相当し、世界中で暗い環境と美しい星空が失われていること、そして現代社会が莫大な電気エネルギーを消費していることが再確認されました。光害の主な影響は、天体観測への影響、エネルギー消費による地球温暖化、動植物への生態系への影響や生活や人体の健康への影響など、多岐におよびます。しかし、現代を生きる私たちは、照明を使わずに生活することはできません。「光害」の観点で言うと、世の中には「質の良い照明」と「質の悪い照明」があります。照明を使う時は、単に明るさを求めるのでなく、光の向き、量、点灯時間に配慮をし、「光の質」を高めることで、生活に支障をきたすことなく、光害を大幅に削減できるのです。日頃何気なく使っている照明ですが、一人一人が質の良い照明に切り替えていく意識を持ち、社会を変えていくことが、現代人に求められている課題ではないでしょうか。

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越智 信彰准教授経営学部 会計ファイナンス学科

  • 専門:環境教育
  • 掲載内容は、取材当時のものです