祖母の介護や犬の保護活動を通して、「食」について考えるようになったという、食環境科学科の杉磨彩子さん。「食事は大切な人を、幸せにも不幸にもするんです」と語る大きな瞳は、フードスペシャリストとしての使命感にあふれている。念願のペットフード業界への就職も決まり、現在は4年間の集大成としての研究に没頭中。はつらつと学会デビューする日も近い。

大切な人に安全で美味しい食事を

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食に興味を持つようになったきっかけは、認知症を患っていた祖母の存在でした。晩年は言葉もうまく話せなくなっていましたが、食事がおいしければ笑顔を見せてくれたし、まずいと吐き出してしまう。「食」って人を素直にさせるんですね。

おいしい、まずいというのは人それぞれの好みもありますが、体に安全か、健康的であるか、という観点からも食を考えたい。そんな思いから、食環境科学科を選びました。

食品添加物のことは何となくは知っていたものの、実験で目の当たりにするとビックリするばかりです。たとえばお菓子などに使われている色素も、天然由来のものはキレイに消化されるのに、合成色素の中にはいつまでも体の中に残ってしまうものもあるのです。

調理実習で自分たちで炊いたご飯と、コンビニなどで売っている保存料が入ったご飯の味の違いを、科学的に比較したこともありました。

食品表示の見方も学んで、買い物をするときには必ずパッケージを見るようになりましたね。大切な人たちには安全なものを食べさせてあげたいし、自分も安全なものを食べたいですから。

食から考えるペットの幸せ

就職活動はフード業界でも、健康意識の高い企業をピックアップして回りました。最近は大手企業でも、添加物をなるべく減らしていこうとしている企業が増えていますね。いくつか内定をいただいた中で決めたのは、第一希望だったペットフードの会社。私は犬の保護活動をずっとしているんですが、食事が悪かったせいで痩せているだけでなく、毛が抜け落ちてしまっていたり、中には失明していたりする犬にもたくさん出会ってきました。

また、最近はペットもどんどん高齢化が進んでいますが、家族として「少しでも、健康で長生きしてもらいたい」というのはすべての飼い主さんの願いだと思います。

ペットは自分で食事を選べません。だからこそ飼い主さん、もっと言えばペットフード業界の責任は大きいと思っています。1匹でも多くのワンちゃんが幸せになれるようなペットフードを世の中に送り出すこと。それが来年からの私の目標になります。

大学4年間の集大成を学会に

大学生活もあと1年。最後に私が研究テーマに選んだのが、「睡眠と栄養の関連性」です。睡眠も食も健康を決める大切な要素ですが、その二つが密接に関係し合うことで、人体にどんな影響があるのか、東京大学の研究室と共同で解析しています。

食生活や栄養状態などについてのデータを1万人近く集めましたが、なかなか興味深い結論が出そうなんです。

今は、とにかく研究に没頭できるのが楽しいですね。社会に出たら、掘り下げたいテーマを、時間を気にせずに追究することもなかなかできなくなるでしょうから。

今、めざしているのはこの研究をまとめた論文を学会に発表すること。できる限りの精度の高い結論を出して、大学生活の集大成を飾りたいと思っています。

杉磨彩子さん生命科学部 食環境科学科 4年

  • 所属研究室:食品栄養学研究室(太田研究室)
  • 東京都・私立中央大学杉並高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです