わたしたちの文明は、その多くを「物質」に支えられています。たとえば、わたしたちが健康的で快適な生活を送れるのは、それを可能にする「物質」が身のまわりにあるからです。医薬品やプラスチック、電子材料など、私たちの暮らしに欠かせない有機化合物を、どうやってつくるか ─ その反応をデザインし、実現するのが、私の専門である「有機合成化学」という学問分野です。
有機合成化学研究室(渕辺耕平 教授)
新規活性種を基盤とする革新的物質変換法の開拓
わたしたちの暮らしと物質
研究内容
現在私の研究グループでは、主に有機フッ素化合物の合成反応を開発しています。たとえば、現在市販されている医薬品の約20%にはフッ素原子が含まれており、薬としての効果があらわれる上で、フッ素が重要な役わりを果たしています。一方で、フッ素は他のハロゲン(塩素や臭素など)とは、大きく異なる性質をもちます。このため、有機化合物の「特定の位置に」「特定の数だけ」「意図した立体化学で」フッ素原子を導入するのは、簡単ではありません。
有機合成化学者としての夢
こうした難しい化合物を自在に合成することは、有機合成化学者の夢のひとつでもあります。そこで私が鍵としているのが、「活性種」です。活性種とは、反応過程で生成される高反応性の分子やイオンのことで、化学反応の主役とも言えるものです。たとえば、フッ素原子に加えて遷移金属の原子を含む活性種など、新たなアイディア・コンセプトに基づく活性種を開発することで、学問や社会、産業に大きな革新をもたらすことを目指しています。
研究グループの現在
現在私の研究グループには、大学院生が4名、卒業研究生(学部4年生)が5名在籍しています。大学院生は学生であると同時にそれぞれの専門領域についての学習や訓練を積んだれっきとした「若手研究者」でもあり、卒業研究生はいわばその卵です。化学が好きな人、ものづくりにワクワクする人、目に見えない反応の世界に興味がある方にぜひ東洋大学の門を叩いていただき、将来ひとや社会を支える夢がある研究に携わってもらえたら嬉しいです。






この研究室を希望する方へ
まずは、理屈抜きに有機化学(=炭素の化学)が好きな人がいいです。目標を達成するための集中とチャレンジを支えるのは、「シンプルに好き」という気持ちです。加えて、狭い考えにとらわれず、柔軟な発想ができる人が有機合成化学に向いています。さらに、真に新しく有用な反応を開発するためには、物事のより深い層、つまり、本質を突き詰めることに興味がある人が適しています。
そして意外と大切なのが、他者とのかかわりや他人への興味です。ひとりひとりの知恵や経験には限りがあり、良い反応を開発するには周囲からの助言が欠かせません。日常の何気ない会話に研究のヒントがあることも、実はよくあります。また、科学の研究も結局のところ人の営みの一部であり、健康的な研究室生活は他者との関わりの中でこそ継続できると確信しています。
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