これまで、日本における下水道や浄化槽を初めとした汚水処理設備は、河川、湖沼、海などの水環境をきれいに、健全に保つことを目標に、整備が進められてきました。しかし、現在、これらの汚水処理設備は、汚水を処理し、水環境の健全化を図るだけでなく、汚水処理に伴って排出される汚泥のリサイクルや、温室効果ガス排出量の削減、省エネや創エネといった要求事項の多様化が進んできています。また、高度経済成長時代に急速に普及したこれらの汚水処理設備の老朽化が進行している現状を踏まえると、今後、単にこれら汚水処理設備の修復・更新のみならず、いかに再構築していくかが重要となります。これらの課題に対しては、汚水処理設備だけでなく、汚水処理システム全体として総合的な視点で捉え、解決を図ることが重要であると考えています。
これまでの研究として、ディスポーザという機器を利用して生ごみを汚水と一緒に処理する場合の総合的な評価や適用技術の開発、節水機器を導入することによって排水量が減少し、その分、汚濁物質濃度が濃くなることなどの影響評価解析など、汚水処理設備への流入水の多様化が処理機能や水環境に及ぼす影響を実験的に解析してきました。併せて、これらの機器の導入による社会全体の水・廃棄物・温室効果ガスの変化を総合的に評価し、水環境だけでなく、廃棄物や温室効果ガス排出量も含めて、環境負荷を最小化する研究に取り組んできています。また、インドネシアなど東南アジアでの汚水処理整備はこれからですので、これまでの日本の経験や技術開発を活かした環境負荷を最小化する汚水処理整備普及の手助けもしています。
これらの水環境システムに関わる研究や基盤整備を通じて、低炭素社会・循環型社会・自然共生社会を構築していくことを目指しています。これらの研究により、汚水処理設備の修復・更新・再構築や東日本大震災からの復旧・復興、およびASEAN等途上国の発展にも貢献していきたいと考えています。