生体医工学科

人々の「生きる」を支える、科学と工学。

生体高分子材料研究室(大澤重仁 准教授)

本研究室ではライフサイエンス分野で有用な高分子材料を作る、扱う技術を体得します。以下、主に扱っている材料ごとにテーマを例示します。

1)高分子金属錯体

生体内にはさまざまな酵素が存在し、種々の反応を触媒することで生体機能は維持されています。これらたんぱくの活性中心には金属元素が存在するものが多くあります。戦略的な分子設計によって、これら酵素活性と同様の機能、さらには超える高分子金属錯体を創出します。そしてこれまで難治であった疾患に対する治療薬や、自然界での有害物質の安全な分解といった社会的課題解決に展望を広げていきます。

2)核酸送達キャリアを作る高分子材料

DNAがRNAを、RNAがタンパクを作り体の機能を作るため、DNAやRNAといった核酸は医薬として有用視されています。しかし、核酸は細胞に入りづらく、生体内で容易に分解代謝されるため、適切に細胞内に核酸を送達してタンパク発現まで導くキャリア(運び手)が必要です。近年Covid19のmRNAワクチンが実用化され、ここでもキャリアは使われていますが、副作用、効果の持続性、保存安定性など課題もどんどん見えてきました。既存のものを改良した高分子、全く新しい高分子を用いてキャリア設計を行い、これらの課題の解決を目指します。

3)ハイドロゲル材料

ハイドロゲルは、水を多く含み柔らかくしなやかであるため、生体に優しい材料として注目を集めています。よって細胞を思い通りの組織形状に育てる足場材、傷を治す創傷被覆材、医療用インプラント材への応用が期待される材料です。それぞれの用途に対する効果を最大とするには、ハイドロゲルの力学物性制御は不可欠で、広く研究がなされています。本研究室では新しい化学構造単位を模索することで、上記の機能を最大限とするハイドロゲルの開発を推進していきます。

この研究室を希望する方へ

『新しい材料を作った』『材料をうまく扱えた』ことから始まるイノベーションは、人類の歴史の中に無数に存在します。現在の医療技術のめざましい進歩においてもそのような場面は数多く存在しています。新規材料の開発とその評価は、新しい科学現象に出会うことに繋がります。それは必ずしも期待通りのものではなく、柔軟な思考、新たな視点から目標設定を変えるとうまくいく場面も訪れます。一方において、そのような場面でも初心を忘れずに初志貫徹した先にしか見えないゴールがあるのも事実です。これは人生においても同じではないでしょうか。当研究室では構造設計が無限大である高分子材料の研究を通じて、材料を扱う技術のみならず、研究目標の自主的な選択、そしてこれからの長い人生の選択に役立つ、そんな力も育んでいきます。ぜひ、高分子の材料学を通じてライフサイエンス分野の発展へ貢献、そして社会へと大きく羽ばたきましょう!