生体医工学科

人々の「生きる」を支える、科学と工学。

物質医工学研究室(木村剛 教授)

バイオマテリアルの生体相互作用の理解と医療への応用

医療では、ディスポーザブルのチューブ、注射器などの身体の外で使用するものから、人工骨、人工関節、人工血管など身体の内部に直接作用するものまでさまざまな医療器具が用いられています。このような医療器具の材料を生体材料(バイオマテリアル)と言います。金属、セラミックス、高分子を素材としたさまざまな種類のバイオマテリアルが開発され、医療器具に用いられています。最近、生体組織から細胞のみを除去した脱細胞化生体組織が新しいバイオマテリアルとして期待されています。生体組織は、細胞と細胞外マトリックス(extracellular matrix: ECM、タンパク質や多糖など)で構成されており、細胞が除かれている脱細胞化生体組織は、細胞外マトリックスそのものになります。これまでに血管、角膜、皮膚、心膜などの生体組織や腎臓、肝臓、心臓などの臓器の脱細胞化が可能となっています。脱細胞化生体組織を代替物として移植した場合、生体に拒絶されずに良好な適合が示されています。当研究室では、脱細胞化生体組織を基盤材料とした研究を行います。例えば、脱細胞化生体組織がなぜ生体と適合するのか?他の材料との違いは何か?生物種・年齢などの違いはあるのか?などの脱細胞化生体組織の基礎研究、脱細胞化生体組織の加工・成型法の開発、生体外モデルの開発、脱細胞化組織を模倣した新規合成材料の開発、脱細胞化技術の植物への展開などの応用研究です。これらについて、生物学、高分子科学、物理化学などのさまざまな視点から研究を進めます。
また、バイオマテリアルは、広義には「人と接する材料」と言え、化粧品や日用品なども含まれます。最近、日用品に使われるプラスチックが分解・劣化して産生されるマイクロ・ナノプラスチックが社会的懸念事項となっています。これに対して、上述の生体外モデルや細胞を活用したプラスチック評価法の開発や人間環境への影響の研究を行います。

この研究室を希望する方へ

私は、大学は、社会に出るためのトレーニングの場と考えています。講義、実習、研究活動、課外活動などの大学生活を通じて、知識、科学的・論理的思考、協調性などの社会で必要な事項を学び、練習する場が大学です。さまざまなチャレンジをし、経験する機会に溢れています。そのなかで、研究活動は、社会の入口を目の前にして、社会をより意識した活動に取り組みます。当研究室では、医療を社会との接点とし、材料を基盤とした医工学に関連する研究活動を「基礎科学の探求」「医療への貢献」をキーワードとして取り組みます。様々な実験を行い、試行錯誤しながら研究を進め、学会、共同研究などを通じて社会と少しずつ接点を持ち、社会に出ていくために最後の準備をします。当研究室の活動理念のもと、研究の難しさや楽しさを味わいながら共に研究課題に挑戦しましょう。