Society 5.0やIndustry 4.0に代表されるフィジカル空間とサイバー空間が高度に融合した社会 (Cyber Physical Systems: CPS) の実現には、人工知能(AI)による膨大なデータ解析だけでなく、センサー等により得られた大量のデータを無線通信ネットワーク及び有線ネットワークにより高速・大容量・低遅延・高信頼にサイバー空間へ送信し、解析結果を同様にフィジカル空間へフィードバックすることが必要不可欠です。例えば、CPSを実現するための無線通信システムとして、2030年を目標に研究・開発が進められている次世代移動通信システム 6Gや、モノだけでなく、ヒトやサービスも含めた全てがネットワークにつながるInternet of Everything (IoE) の活用が期待されています。
本研究室では、これらの無線通信・ネットワークシステムを実現するための基盤技術の確立及び応用を目指した取り組みを進めます。ひとつの例として、センサー等から得られた情報を送る時に、0と1で表されたデータ列 (ビット列) を様々な手順を経て相手に送ることになりますが、受信の際に加わる雑音や他の機器からの電波干渉、建物等を電波が通ることによる信号減衰が原因で0と1が反転して検出され、正しいデータが得られないこと (データの誤り) があります。とりわけ、データのやり取りが高速・大容量になるほどこの現象が起こりやすくなり、1秒間に100ギガビットものデータを送受信することが想定される6Gにおいては、これまで以上にデータの誤りに対しての対策が必要です。この課題を解決するための手段として、送信データに対して追加のビット列を付加し、データ受信時に様々な方法でデータの誤りを訂正する誤り訂正符号や、データ誤りを検出した際に効率良くデータを再送してもらう再送方式等の誤り制御方式のさらなる高信頼化に取り組んでいます。また、1平方km内に1000万程度の機器を同時に接続するような超多元接続を実現するためのアクセス手順や、これらの通信・ネットワークシステムと他分野との融合を目指した取り組みも行います。