建築学科

デザインするのは、快適で安全な建築、まち、そして生活。

木造建築・構造工学研究室(高岩裕也 准教授)

工学的な知見を用いて歴史的木造建築物を守る

我が国には、歴史的木造建築物が数多く現存しています。その多くは文化財建造物として内部を公開しながら、保存・活用されています。内部を公開するということは、人命に関わることですので、建築物に対してある程度の耐震化を行うことが社会的義務となっています。耐震化するためには、対象となる建築物が現状でどの程度の耐震性能を有しているかを確認する必要がありますが、木造建築物の耐震性能を正確に診断する方法は確立されているとは言い難いのが現状です。また、現代の科学技術を用いても、木造建築物にはまだ明らかとなっていない耐震性能・地震時挙動メカニズムが多く存在しています。そこで、木造建築物の耐震性能を評価するために、最新の機材・装置を使って実在する木造建築物を調査したり、木造建築物を模した試験体を作製して実験を行ったり、数値解析による耐震シミュレーションを行ったりします。それら研究によって得られた工学的な知見によって、より正確な耐震補強量を導き出すことが可能となり、その導き出した補強量で耐震化を行うことで、木造建築物の持っている歴史的・文化的価値をなるべく残したまま、後世へと継承していくことが可能となると考えています。
また、現在、耐震補強で用いられている耐震補強部材も最適なものであるとは言えません。そこで、先端材料を用いた耐震補強部材の研究・開発も行っています。この研究・開発も木造建築物の持っている歴史的・文化的価値の保守に寄与するものであると考えています。

1 実際の伝統木造建築物を題材とした教育・研究活動
2 現地での構造調査の様子
3 実験で用いる試験体の作製も自分たちで行います

この研究室を希望する方へ

歴史的木造建築物は、私たちが生まれるよりもずっと前の古くから多くの人々が関わり、修理・修復して、今日まで現存してきました。研究の対象が、歴史的・文化的価値の高い木造建築物であることを自覚し、研究対象である歴史的木造建築物に対して敬意を持って研究活動できる人を希望します。そして、自らを高めるために学問を研鑽するという考えもあるかもしれませんが、木造建築物の持っている歴史的・文化的価値の保守に寄与するために学問を研鑽する、自身のためにではなく、他のために、という気持ちで学問を研鑽するとよいと思います。結果的に自らの工学的な技術・感性を高めることができると思います。そのためには、自らが研究した工学的な知見・研究成果を社会へ還元する必要があるため、学会発表や論文集への投稿などに積極的に取り組める人を希望します。また、研究の更なる高度化を目指して、大学院へ進学することも歓迎します。皆さんと一緒に建築学を研鑽する日を楽しみにしています。