建築と、それが建つ場所との関係は切っても切れないものですが、20世紀に私たちの生活を席巻した高度成長や大量生産・大量消費の社会は、建築がいちいち場所について考えることを阻害してきました。どの場所に建つかに関わらず、同じものを繰り返し作った方が効率がよく、それが社会から求められた合理性でもあったからです。しかし時代が変遷し、これから成熟社会、人口減少社会へと向かっていく中で、社会と建築の関わりも変わっていきます。大量に同じ形の建物が要請される機会は減るだろうし、気候風土にあった省エネルギーな建物や、地形を生かしたインフラフリーな建物にも期待が高まっています。また、空き家問題やストック活用についても今までにない知見が必要になります。このような社会状況の中で、建築は場所とどのように関係を紡いでいけばいいのかを軸に据え、現代的な建築のあり方を研究しています。
そのためには場所についてよく知ることが大切ですので、実際に現地に赴いてのフィールドワークや、過去からの変遷を辿る歴史的な検証、地形や気候と産業の関係など、様々な角度から「場所」にアプローチすることを大切にしています。そして、これらの成果を具体的な建築の設計にフィードバックし、現代的な地域性を纏った建築の姿を見つけていくことを目指しています。