史学科
未来への手がかりは、歴史の学びから生まれる。文献史料などから、過去に生きた人びとの社会や暮らしを分析し、歴史像を組み立てます。それは変化を続ける国際情勢や日本の現状を理解する基盤となり、現代と未来を築いていく貴重な礎となるでしょう。「日本史」「東洋史」「西洋史」の3つの専攻で、ゼミナール(少人数制の演習)を中心に学びを深めます。
学問の魅力
歴史から豊かな「知恵」をくみ取る
「歴史学」とは、人類の過去の営みをさまざまな視点から知ることにより、現在の社会の起源を探究し、その成果を現代に生きる私たちのために活用していく学問です。
また、史料や原典から史実を分析することを通して、過去の社会や生活をできる限り正確に知り、各自が探究する歴史像を組み立てるクリエイティブな学問でもあります。
政治、経済、文化とあらゆる面から人類の歴史を探り、正確な歴史知識に裏打ちされた揺るぎない世界観を持つことは、混迷する現代社会を生きて行くうえで大きな指針となります。
学び方
史料研究に重点を置いて学ぶ
史学科は「日本史学」「東洋史学」「西洋史学」の3つの専攻を設置し、希望に応じて2年次から各専攻に分かれます。どの専攻でも、「実証」に重きを置いた講義が充実しています。
2年次の史料研究において、「日本史学」では手書きの古文書を含めた史料の講読、「東洋史学」と「西洋史学」では原書の講読を徹底的に行います。
3年次からの卒論演習では、テーマ選択、論文執筆の進め方、フィールドワークなどについて、担当教員と話し合いながら授業を進めていきます。少人数制によるアットホームな雰囲気のなか、積極的に研究に打ち込むことができます。
新カリキュラムの特徴
すべての授業科目をセメスター制に対応させました。また、初年次教育科目として「歴史学入門」「歴史学研究法」を開設しました。1年次には、必修科目としてリテラシー能力の向上を目的とした「歴史学入門」「歴史学研究法」およびグローバルな歴史認識の涵養を目指す「概説」を配置しました。
そして2年次には、アクティブ・ラーニングを組み込んだ「演習」「特講」、3年次には実践的な「卒論演習」と、学年進行に伴ってより深く、より多様な歴史学の成果に触れていきます。
最終的には、4年次に自身の研究成果を「卒業論文」としてまとめることができる、体系的なカリキュラムとなっています。
グローバル化への対応
学生の英語能力向上のための英語科目の配置
英語ⅠBでは、史学科の学生を対象に歴史学に関する教材を用いた授業を行います。日・東・西の歴史を記したテキストの講読やドキュメンタリ映像の視聴など、受講生の関心に合わせながら英語能力の向上を目指しています。
異文化理解、複言語主義への対応
日本史、東洋史、西洋史を概観する各「概説」科目を設置します。3つの概説すべてを1年次の必修科目とすることで、異文化を歴史的に考察し理解する能力を養うことを図っています。
また、「演習」科目を中心に、中国語・韓国語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語・ロシア語・古典ラテン語・古典ギリシア語などで記された史料あるいは研究成果に触れる機会を数多く提供しています。
4年間の学び
世界の歴史にアプローチする3専攻を設置
まず1年次で概説科目や基礎演習を通じて日本、東洋、世界の歴史に幅広くアプローチし、2年次以降は各自の関心に応じて3つの分野のいずれかを専攻します。3年次からは演習や特講などでさらに専門性を深めつつ、4年次での卒業論文に結びつく独自の研究テーマを模索していきます。
卒業論文のテーマ例
- 戦国大名家における女性の役割
- 戊辰戦争と会津藩
- 湘南地域における海水浴の発達と鉄道
- 唐代における冊封体制と外交儀礼
- 十字軍思想の源流
- ウィンストン・チャーチルと帝国主義思想 など
学びの取り組み
調査研修
例年は4月に、新入生を中心に歴史系博物館や公文書館を訪問し、見聞を広めています。
歴史の研究・学習には、現物を見て知るということが重要な役割を果たします。実際の物から当時の状況を想像していくことが、歴史の理解を飛躍的に高めてくれるからです。
コロナ禍以前は、千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館を訪れていました。昨年はその代わりに新入生の入門的な授業の一環として、事前にオンラインで研究をうけたうえで、大学の近くにあり、大学との提携で常設展は無料で観覧できる東京国立博物館、東洋文庫ミュージアム、東京国立近代美術館のいずれかを各自で訪問してレポートを作成しました。この研修をきっかけに、多くの事物に触れる重要さに気づいて、その後も大学の地の利を活かして頻繁に通うようになるケースも多々ありました。また平常に戻れば、国立歴史民俗博物館を訪問することを復活させる予定です。
海外研修
学生の国際的理解を高めるため、海外研修事業を実施しています。日本を離れて新しい土地に触れるだけでも、外国史を学ぶことの意味について深く考えるきっかけとなります。本研修ではさらに、現地の大学や各種研究機関と交流を行うことで、その土地に暮らす人びとの生活を身近に感じることを目指しています。
2012年と2016年には台湾を、2014年と2018年にはイタリアを、そして2016年から毎年東欧のスロベニアを訪問しました。研修後に作成された報告書には、自分たちとは異なる文化圏で積み重ねられてきた豊かな歴史に触れた学生たちの驚きや戸惑い、そしてときに鋭い批評が記されています。海外研修は、コロナ禍が落ち着き、安全の確認が取れれば、2022年度以降も定期的に開催する予定です。
博物館との連携
本学は井上円了記念博物館を設置し、建学の精神を学内外に広くアピールしようとしています。学生はここで創立者について学ぶことができると同時に、社会教育のための施設である博物館について、理解を深めることができるようになっています。
史学科では学芸員資格の取得ができることから、博物館との関係は密接です。授業では博物館が所蔵する古文書を用いて近世近代の村の様子を考えることもあります。
また教員が中心となり、学生有志の協力を得て、博物館所蔵資料の整理や調査を行っています。実際の原史料に触れることは、歴史研究にとって本当に大切です。和紙に墨で書かれたくずし字を読むのは大変ですが、慣れれば早い人は数ヶ月である程度を読みこなすことができるようになります。そこに書かれている内容は未知の事柄であり、もしかしたら新発見があるかもしれません。授業の成果を展示にまで高めていく試みも行っています。