電子レンジには500~1500W級の強い電波が用いられているため、電波が外部へ漏れないよう工夫されています。電波も光も放射線も同じ電磁波ですが、電離作用の有無によって性質は大きく異なります。電子レンジで用いられる電波は非電離放射線であり、適切に使用されている限り、健康被害を示す科学的な証拠はないとされています。一方で、同じ周波数帯の無線環境には影響を与えることが分かっています。生活の利便性を追求するだけでなく、EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)の概念も設計には欠かせません。
電子機器には継目や隙間があり、そこから電波が漏れる可能性があります。この現象を理解するためには、物理現象を再現できる程度まで極力簡素化した「モデル」という考え方が重要になります。電子レンジでは、ガスケット材料やチョーク構造、セレーション構造などを組み合わせて電波の放射を抑えています。チョーク構造を設けることで漏洩電波が低減される様子は、シミュレーションによって視覚的に確認することができます。
チョーク構造は古くから利用されてきましたが、その形状や配置、周期構造の設計指針には現在も分かっていないことが残されています。実験を積み重ねて開発された技術を理論的に解析し、設計指針を確立することができれば、電子レンジだけでなく、他の周波数帯の電子装置にも応用できる可能性があります。さらに、実験によって開発された技術も、電気フィルタ回路を用いて理論的に解析できれば、他のシステムや電子装置にも応用できる可能性があります。