心理学は社会科学の一種で、実験やアンケートからデータを収集し、分析するという方法が一般的です。しかし、小さな部屋のなかで紙と鉛筆でアンケートに答える、といった方法では、実際の生活場面で人の思考を正しく表すことができているのか確信が持てません。そのため社会科学者は、実際の生活の場面でのデータが収集できるよう、適切な方法を探し続けています。なかでも効果的であると注目されている“経験サンプリング法”は、数日間の普通の生活のなかで参加者が起きている時間に無作為なタイミングで合図を出し、その時点での気持ちや状況をオンラインで報告してもらう方法です。日常生活において、人が「何」を「いつ」「どのように」欲求するのかを心理学的に分析するため、最近行った「日常生活における欲求経験」の調査では、20歳から69歳までの日本人191人に、7日間にわたって1日6回の合図を出して調査しました。事前予測では、日本人は義理を果たそうと「○○しなければならない」が動機付けのほとんどを占めると考えていたのですが、実際は「○○したい」という欲求の方が約7倍も多い結果となりました。カテゴリー別では、最も頻度の高い欲求は飲食で、2位と3位は休息と娯楽でした。時間分布では、正午頃に飲食の欲求、午後3時には休憩の欲求、その後リフレッシュができたのか、午後4時頃の仕事の欲求が多くなり、午後7時頃には趣味と娯楽の欲求が激しく上がっています。私たちの生活の中で何が一般的で大切なのかがわかります。この革新的な研究法により、心理学の進歩が促進しているのです。

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尾崎 由佳准教授社会学部 社会心理学科

  • 専門:目的達成、自己に対する認識およびコントロール、意識と無意識
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