日本人1人が1年間で消費する豚肉を生産するために、およそ100kgの温室効果ガスが排出されます。温室効果ガスは、工業分野で大量に排出されるイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、実際は畜産や農業などの食生活と密接に関わる分野で大量に発生していることが、フードデータをもとにした研究で明らかにされています。

「食」に関するデータは、経済をはじめさまざまな分野のデータと結びつき、その重要性を増しています。これまで私は学生とともに、「食」と「経済」についてさまざまな分析手法を用いてデータを分析してきました。その対象は幅広く、日本人の食料消費におけるPFCバランス(Protein=タンパク質、Fat=脂質、Carbohydrate=炭水化物)に関する研究から、日本で生産される全野菜から摂れるすべての栄養素を対象とした大きなデータを扱う研究までさまざまです。その他にも、岩手県の呉坪かぶや、大分県の安心院牛などの「ローカルな食」に関するデータも研究対象としています。

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現在は、豚肉生産で排出される100kgの二酸化炭素をどのように削減するかを目的とした研究に取り組んでいます。例えば野生のイノシシは石油燃料をまったく使用せずに育ちます。そのイノシシ肉を消費し、有効利用することでCO2を削減できるのではないかという視点でデータを収集・分析しています。

フードサイエンスの分野では、水や空気などの水産資源からスタートして生産者や加工業者などの食品産業との関係、あるいはさらに大きなテーマである食品安全保障の問題など幅広い問題に向き合う必要があります。研究者の使命は、目の前のデータと対話し、まだ見つかっていない重要な事実を発見し社会に役立てることだと考えています。

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児玉 剛史教授食料経済学研究室(食環境科学部 フードデータサイエンス学科)

  • 専門:食料経済学
  • 掲載内容は、取材当時のものです