日本文学文化学科の冨澤郁葉さんは、能の『殺生石(せっしょうせき)』という演目を卒業論文のテーマに選びました。入学前に能を観たことはなく、授業や大学主催の能楽鑑賞会などから能への興味を深めていったといいます。「いろいろな日本文化を幅広く学びたい」と思い、この学科を志望しましたが、「人の話をしっかり理解し、自分の中に取り込めるようになった」と、成長を実感しています。今、卒業論文のための研究をしながら、自身の個性を生かすことのできる仕事を望み、就職活動を行っています。

日本文学を幅広く学びたくて

日本文学文化学科を志望したのは、「日本文化のいろいろな面を知り、学び、研究したい」と感じていたからです。小学3年生から今まで書道を続けていたり、また高校時代は箏曲部に所属し全国大会に出場したりするなど、ずっと日本文化に興味を持っていました。

東洋大学の日本文学文化学科は、日本文学の研究だけに偏らず、「日本の文化を広く、深く勉強できる」と感じました。それでも入学前は、「とはいえ日本文学に関する授業が多いのだろうな」とイメージしていました。でも、授業を受けてみると、本当に“日本の文化を何でも学べる”と実感し、「いろいろ観たり、楽しんだり」しながら学べるので、私の志向にとてもマッチしていたと思います。

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潜在的興味に気づく、多くの機会がある大学

1年生の秋に、大学内で能楽の鑑賞会がありました。そこで『土蜘蛛』という能の演目を観たのですが、「静かでゆっくりした動きだけれど、その中にきちんと表現が存在している」と感動し、それが能を研究していくきっかけとなりました。

また、3年生で受講した和田博文先生の「中世日本文学史」では、室町時代に演じられた能を再現した映像を鑑賞することができ、とても印象深い授業でした。
その頃の能は、動きが早かったり、ユーモアのある物語だったり、時代による演じ方や演出の違いに興味をそそられました。能は大昔、田楽やいろいろな芸能が混ざってできたのだと思いますが、もともとは多分チャキチャキしたものだったはずです。その後、幽玄能を作り出して、優美な雰囲気を取り込みながら今の形になっていったのでしょうね。幅広く深く、さまざまな角度から日本文化や能について学ぶことができたと思います。

日本文学文化学科の先生方は、本当に驚くほど専門知識が豊富です。本来授業でやるべきことに留まらず、どんどん深いところまで掘り下げて教えてくださるので、常に面白さと興味を感じながら学ぶことができます。真剣に専門知識を学ぼうとする学生も多いですね。
私自身、この大学で「しっかりと話を聞き、それをきちんと咀嚼し、知識として自分の中に取り込むことができるようになった」と、成長を感じています。

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ここで得た多くの知見を卒業論文で表現したい

3年生から能楽と狂言のゼミを取っていて、現在、『殺生石』という能の演目をテーマに研究を行い、卒業論文を進めています。昨年たまたま那須高原を訪れた時、実際に殺生石を見る機会があり、「ああ、この石が能の演目になっているんだ」と思い、この演目にどんどん興味を深めていったことがテーマに選んだ理由です。

『殺生石』は原典などはわかっておらず、おそらく太古からの伝承・伝説などがいくつか混じり合ってお話になっていたと思われます。能は基本的に静かな動きですが、この演目では石がパコッと割れたり、石の中から人が出てきたり、現在の能のイメージとは少し違う面白さも楽しみの1つ。面白がりながら研究できるので、この演目をテーマにして良かったと感じています。『殺生石』の研究の中に、他の授業などから得た数々の知見も織り込みながら卒業論文を完成させたいですね。
そうして卒業論文をまとめながら、私は就職活動も進めてきました。何か1つのことを実直にコツコツとやっていくことが得意であることを生かして働きたいと考えており、志望していた金融系の企業から内定をいただきました。今後はバックオフィス業務等に就き、多くの人を支えていきたい、と望んでいます。

冨澤 郁葉さん文学部 日本文学文化学科 4年

  • 所属ゼミナール:原田香織ゼミナール
  • 埼玉県立不動岡高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです