新たにスポーツという柱で学びを確立

総合情報学部に「心理・スポーツ情報コース」が開設されますが、実はこれまでにも、スポーツと関わりのある授業や卒業研究が行われてきました。たとえば、サッカーの試合において、試合全体という大きなデータ(ビッグデータ)の中から、直接的に得点には結びつかなかったとしても、ある選手のある時間の動きが、その試合にどのような影響をもたらしたか、という“意味のある”データを取り出し、分析する「情報技術」の研究は、その一例です。スポーツを科学的な側面でとらえ、コンピュータを使って分析する。これが総合情報学部における学びの特色と言えるでしょう。

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スポーツを題材にデータを収集・分析

今、スポーツを取り巻く環境が大きく変化しています。たとえばスポーツ用品を扱う業界は今や、1兆円産業とも呼ばれ、それに伴い、スポーツ人口も増加傾向にあります。また、機械に関する広い学術分野からなる一般社団法人日本機械学会では、2015年4月より新たに「スポーツ工学・ヒューマンダイナミックス部門」が発足しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、今後、わが国のスポーツへの取り組みはますます盛んになると思われます。この学会ではスポーツ工学という分野から、スポーツを機械工学の目線からとらえて、さらに発展させていくことを考えています。今や、スポーツは用具や施設・設備などを抜きにして考えられません。こうしたハードウェアの高性能化や安全性・快適性の向上には機械工学の分野が不可欠です。スポーツの基本は身体運動であり、人間の動作を解析するにはバイオメカニクス分野での研究が行われますが、パラリンピックを例にとればわかるように、人間の身体の動きを補助する用具の研究開発を進めることも求められています。そして、このような専門分野での研究開発は、将来的に高齢者や障がい者のために応用され、一般化することになります。スポーツと機械工学の分野は切り離せない関係にあるのです。

文理融合の総合情報学科らしさを生かして

心理・スポーツ情報コースでは、何より「スポーツが好き」であることを学生に求めます。自ら身体を動かしアスリートとして活動している人から、スポーツを観ることが好きな人、将来はスポーツに関連した仕事に就きたい人まで、スポーツに興味をもてる人であれば、意欲的に学ぶことができるコースです。講義形式の授業だけではなく、実習や演習もあり、その際の題材としてスポーツを扱うことになります。総合情報学科は文理融合の学問分野で学びますので、高校で文系であっても理系であっても、専攻はどちらでも構いません。卒業生のなかには、文系として入学したものの、理系寄りの研究を深めて、理系の大学院へ進学した人もいます。このコースにはスポーツをする人間の心理・生体の情報処理を学ぶ文系寄りの科目からスポーツダイナミックスの情報処理を学ぶ理系寄りの科目まで幅広く用意されています。学生が自分の興味に合わせて学びを追及して欲しいと思います。

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学問としてのスポーツを社会の発展に役立てる

卒業後の進路としては、スポーツ用品業界への就職をはじめ、スポーツに関わる行政や非営利団体といったところで情報システムの知識・技術を活かして活躍することもできるでしょう。また、4年間学んで、さらに研究を深めたいという学生には、大学院(総合情報学研究科)も用意しています。大学院進学にあたっては、飛び級制度や早期卒業制度もあり、学部を3年で終えて大学院で2年学ぶほか、学部3年半に大学院1年半、学部4年で大学院1年という、5年間で修士課程を終える道もあります。もちろんそれは本人のかなりの努力を要する厳しい道ではありますが、学びたい意欲の強い学生にはこのような選択肢があることも紹介しておきます。

これまで、学問分野として成立していなかったスポーツの分野に、科学的にアプローチすることで、日本のスポーツの発展に貢献し、社会のために貢献するということができるようになります。それだけに学問として取り組む価値のある分野だと言えるでしょう。

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田村 善昭教授総合情報学部 総合情報学科 心理・スポーツ情報専攻

  • 専門:特殊映像の取得・表示技術やその利用情報の可視化に関する研究

  • 掲載内容は、取材当時のものです