地形を分類し、都市の人工物を調査・分析して防災対策を考える研究結果を情報提供することで、「安全で快適な生活」を支える一役を担う鈴木崇伸教授。始まりは、地震被災地で感じた「なぜ?」だった。だからこそ、この学びの意義を認識し、納得できるまで追求してほしいと学生たちにも強く望んでいる。

地震被害に備えた構造物の研究

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学問でいう「都市」とは、人間が集合して住んでいる場所のことです。東京都心のような大都会ばかりを指すのではありません。その「都市」において地震や台風などの自然災害が起きた場合、不具合が生じないようにするにはどうすればいいか。もともと人間は少しでも高い場所に住み、低地は水田のように利用される場所であったと想定されます。たとえ過去に被害がなくても、平野部は洪水や地盤の液状化という危険性をはらんでいるととらえ、対策を考えておくことが重要です。情報提供とともに、構造物の強化やライフラインにおける復旧対策など、十分な準備をしておくことが必要なのです。

私の研究では、橋やトンネルなどの構造物の構造計算をし、防災上どのくらいの効果があるかを調べています。東日本大震災の後にも、東北地方に足を運び、どのような状況で構造物が壊れたかを分析しました。

「被害のほどは地震が起きてみないとわからない」というのではお粗末。あらゆる場所が持つ被害の可能性に対して、準備となる策を考えています。

地元住民に必要な情報として提供

私が初めて「地震被害調査」に携わったのは今から30年前のこと。1983年の日本海中部地震で現地調査に行き、被害のある場所とない場所の差はどこにあるのだろうと考えました。1995年の阪神淡路大震災後の調査でも、倒壊した家屋と残った家屋の分かれ目となる要因がわからず、関心が深まったことがこの研究のきっかけです。

直近では、川越キャンパスが所在する川越市役所からの依頼を受けて、直下型地震の被害想定を行いました。学生たちと一緒に地盤の条件や標高差からデータを取り、計算し、分析結果として、震度が大きそうな場所や液状化が発生しやすい場所、住宅被害が発生しやすい場所を想定したほか、避難者数や満杯になりそうな小中学校を想定しています。2012年度には学内講演で一般市民にも結果報告を行いました。もしかしたら不安をかき立てるだけかもしれませんが、実際に地震が起きた際に冷静に行動できるよう、今後も住民の方々に必要な情報を提供していきたいと考えています。

地域社会の問題解決を担う学び

同じ理工学部でも、建築学科は商業ビルや個人住宅など屋根のあるものが対象で、都市環境デザイン学科は屋根のないものを扱うといえば、研究内容がわかりやすいかもしれませんね。つまり、都市環境デザイン学科では、道路・橋・トンネルなど交通計画や環境問題も含めて、都市生活全体をとらえ、役所や建設会社とも関わりながら住みやすくするための策を練るのです。自分が納得できないことはとことん追求してみることが大切。地域社会における問題を解決していくという意味でも、社会に貢献できる学びといえます。

研究成果としての「川越市の地震ハザードマップ」は、現在、防災マップとして公開されています。リスクを抱える地域への注意喚起ができて良かったですし、学生たちも、社会貢献できる大切な勉強をしたのだと認識してほしいと思っています。

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鈴木崇伸教授理工学部 都市環境デザイン学科

  • 専門:地震工学・構造工学、構造物の健全性評価、ライフラインの防災対策

  • 掲載内容は、取材当時のものです