是枝喜代治教授の研究室は、色とりどりの遊具や玩具でいっぱいだ。壁には、子どもたちの笑顔の写真が飾られている。遊びを通して障害のある子どもの発達を支援する「ムーブメント教育・療法」に取り組み、特別支援学校で教員を務めた経験もある是枝教授が、優しい笑顔で迎えてくれた。

子どもたちとふれあい、経験的に学びを深める

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日本の総人口の約5.8%。これは、障害者手帳を保持し、何らかの福祉的なサービスを必要としている人の割合です。これらの人々が地域社会の中で安心して豊かな生活を送れるよう、法制度や利用できるサービス、個々のニーズに応じた支援のあり方を学ぶのが、「障害者福祉学」です。障害者福祉は、みなさんにとってあまり身近ではないかもしれませんが、先に述べた「国民のおよそ20人に1人」という数字を知ると、決して自分とは別の世界のことではないとわかるでしょう。

障害者福祉の中で、私が特に専門的に扱ってきたのが、「障害児教育」の分野です。障害児教育では、自閉症や発達障害などそれぞれの障害の特性を理解し、教育・療育の形態や方法を学び、一人ひとりの子どもの状態に応じた支援計画の作り方を、事例研究などを通して学んでいきます。

この分野の学びで重要になるのが、実際に子どもたちとふれあうフィールドワークです。私自身も、大学院生時代から、障害児を対象としたレクリエーション活動に取り組んできました。現在も、軽い運動や遊びを通して発達を支援する「ムーブメント教育・療法」という実践的な理論を用いて、障害児の社会性やコミュニケーション力を育てるための活動を続けています。

学生にも、積極的に学外に出て経験的に学ぶことを奨励しています。多くの学生が、児童デイサービスや特別支援学校など地域の障害児支援施設に出向き、ボランティア活動などの実践を通して学びを深めています。

障害者がより生きやすい社会体系を築く

障害児教育でもう一つ重要なのが、障害児をもつ保護者に対する継続的な支援です。本人と同様もしくはそれ以上に不安や悩みを抱え、ネガティブな思考をお持ちの方も少なくありません。そのような方々に支援者として寄り添ううちに、子どもに変化や成長が見え、保護者の方と喜びを共有できたときには、とても大きなやりがいを感じます。

障害を抱えた人々がより生きやすい社会を築き上げていくことが、この学問の社会的使命だと言えるでしょう。それぞれのニーズに応じて対策を考えていく当事者に寄り添った視点から、法律や制度、政策を考える大きな視点まで、社会的弱者を支える実践や研究は非常に意義のあるものなのです。

当事者の気持ちに寄り添い、ニーズに応える

私の授業では、障害者福祉や障害児教育の領域をより身近な問題としてとらえられるよう、さまざまな事例を挙げ、それについて学生自身に考えさせています。学生からは実にさまざまな意見が出てきます。人間を対象にした学問ですから、答えはひとつではありません。いろいろな考え方、価値観、倫理観があって良いし、そうあるべきだと私は考えています。大切なのは、当事者の気持ちに寄り添い、そのニーズに応えることです。授業ではその軸をしっかりと認識し、さまざまな支援のあり方を模索していきます。

生活支援学専攻では、介護福祉、精神保健福祉、医療福祉、児童や高齢者福祉、地域福祉などについて、幅広く学ぶことができます。入学時から「これをやりたい」と決めている学生は少数です。さまざまな学問に触れるなかで、自分の興味・関心に合ったものを見極めてほしいと思っています。そして、その過程を通して、自分自身の人間性や価値観をも確立していくことができると考えています。

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是枝喜代治教授ライフデザイン学部 生活支援学科 生活支援学専攻

  • 専門:障害者福祉、障害児教育

  • 掲載内容は、取材当時のものです