南極や高緯度北極は、1年のうちの大半が0℃以下の氷点下の環境であり、地球上で最も過酷な環境の1つです。このような過酷な環境にも関わらず南極からは1000種、北極からは数千種の微生物が発見されています。
しかし地球上で最も過酷な南極域・高緯度北極域は同時に近年の環境変動の影響を最も受けている地域の1つであります。このままのペースで温暖化が続くと、2100年までに年平均気温が約3.2℃上昇すると予想されており、これは日本の緯度に換算すると約360 km(東京都新宿区―仙台市の距離に相当)の気温差に相当します。
昭和基地周辺や高緯度北極に生息している微生物のほとんどは、低温環境に特化しているため、この気温上昇はこれらの地域に生息する微生物の生存に重大な影響を与えることが懸念されています。ただ極地はアクセスが極めて困難なため、南極・北極にどのような微生物がどの程度存在しているのか、その全体像はいまだ十分に解明されていません。また、極地の微生物はその低温環境に特化した特徴から、新たな微生物資源としても注目を集めています。
そこで私の研究室では、南極および北極に生息する微生物の多様性を明らかにし、これらの微生物が生態系の中でどのような機能を明らかにすることを目的として研究を進めています。これらの微生物の多様性・機能・ゲノム情報を統合的に理解することは、気候変動下における生態系応答の予測や極域環境の保全に貢献するとともに、低温適応機構を活かしたグリーンバイオテクノロジーへの展開にもつながります。