微生物生理工学研究室(高妻篤史 教授)

電気活性微生物の生理機能解明と応用

生物のエネルギー代謝の根幹は「電子の伝達」です。例えば、我々(ヒト)を含む動物は酸素呼吸を行いますが、これは食物から得た有機物を酸化分解し、その際に放出される電子を酸素に伝達することでエネルギーを獲得するプロセスです。一方、微生物のなかには、酸素以外の物質に電子を渡して呼吸を行うものも存在します。そして、そのなかには、細胞の外にある鉱物や電極にも電子を伝達し、電気をつくり出すことができる微生物もいます。私(高妻)は、このような「電気活性微生物(発電菌)」について、基礎と応用の両面から15年以上にわたって研究してきました。

本研究室は、2025年に新たに発足した研究室です。具体的な卒業論文研究のテーマは配属されたみなさんと相談しながら決めていきますが、概ね以下のようなテーマについて、共に研究を進めていきたいと考えています。

  • 遺伝子改変による電流産生能力の増強
    電気活性微生物は、バイオマス廃棄物から電力を産み出すシステム(微生物燃料電池)や、微生物に電気エネルギーを与えて物質を合成するシステム(微生物電気合成)など、さまざまな有用技術への応用が期待されています。しかし、現状ではこれらの微生物が生成する電流は十分ではありません。そのため、遺伝子工学を駆使して、電流産生能力の増強を目指します。
  • 電気活性微生物の環境認識・応答機構の解明
    発電菌は、鉱物(電極)を電子受容体として呼吸を行います。そのため、これらの物質の存在を感知し、効率的に利用することは、発電菌が環境中で生き残るために重要な生理機能だと考えられます。しかし、発電菌が細胞外の電子受容体をどのように認識するのかは、まだ十分に解明されていません。このテーマでは、分子生物学と電気化学を組み合わせたアプローチによって、モデル発電菌(シュワネラ菌)の環境認識・応答機構を解明していきます。

他にも、以下のテーマも候補として考えています。

  • 電気産生に関与するタンパク質の機能解析
  • 新しい電気活性微生物の探索
  • 電気活性微生物を利用した新しい有用プロセスの開発

これらの研究を通じて、電気活性微生物の未知の能力を明らかにし、SDGsに貢献できる新しい技術を開発していきます。

電気活性微生物の代謝と電極との電子授受
遺伝子改変による発電菌バイオフィルムの高密度化

この研究室を希望する方へ

微生物に興味があり、熱意を持って研究に取り組む意志のある方を歓迎します!特に、以下のような意欲をもつ方にマッチすると思います。

  • 遺伝子工学に興味があり、自分で微生物を改変してみたいと思う方
  • 遺伝子の働きや発現制御について深く学びたい方
  • 自分で計画を立て、主体的に研究を進めたい方

研究室では、これまでの講義や実習とは異なり、教員自身も答えを知らない課題に取り組むことになります。当然ながら、うまくいかないことがほとんどです。そのたびに、「失敗した…」と落ち込んでいたら前に進みません。大切なのは、「この方法ではダメなことがわかった!」と前向きに捉え、何度も試行錯誤を繰り返すことです。このような経験は、今後のみなさんの人生において大いに役立つはずです。努力が実を結び、自分の立てた仮説が実証できた時の喜びは格別です。まずは簡単なことから、少しずつでよいので、そうした経験を積み重ねて、皆さんが成長していけるようサポートします。「研究室」は、仲間と共に学ぶ場です。一緒に研究室を創り上げていきましょう!

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