生物資源学科

植物と微生物に学び、未来をつくる

分子遺伝学研究室(一石昭彦 教授)

糸状菌におけるDNA修復機構と形態形成に関する研究

アカパンカビの培養風景

ほとんどの生物は、遺伝情報の担い手としてDNAを使用している。このDNAは、生物が生きている間、代謝産物由来の化学物質による内的要因や紫外線や環境変異原などの外的要因により、常に損傷を受けている。これらにより生じたDNA損傷をそのままにしておくと、転写や翻訳などのDNAの代謝反応を阻害して細胞死を引き起こしたり、遺伝子の変異の原因となり固体の突然変異をまねいたりする。また、染色体上への突然変異の蓄積は、癌や老化を引き起こす原因であると考えられている。そのため全ての生物は、DNA上に生じたDNA損傷を効率よく修復する仕組み(DNA修復機構)を備えており、DNA損傷による遺伝子変異を防いでいる。この仕組みは細菌からヒトまで保存されており、当研究室では、アカパンカビを使ってこのDNAの損傷を修復する機構、特にヌクレオチド除去修復機構( nucleotide excision repair; NER )についての研究を行っている。

また、糸状菌の形態形成についての研究も行っている。糸状菌は下等真核生物ですが酵母などよりもずっと複雑な形態をしています。そのような形態形成がどの様になっているのかについて研究をしている。その中の一つに、CDC42シグナル伝達経路がある。この経路はすべての真核生物に存在し、細胞の極性成長や有性生殖などさまざまな細胞調節に関与している重要な経路である。この経路はCDC42、CDC24、BEM1から構成され、下流のPAKエフェクターであるSTE20 とCLA4を活性化することでシグナル伝達を行っている。この経路がアカパンカビの形態形成にどの様に関与しているかについて研究を行っている。

この研究室を希望する方へ

生命系の研究は、使用している実験材料の状態に合わせて実験をする必要がありますので、研究を行っていくには、しっかりと自分自身で計画を立てて実験を行うことが重要となります。また、研究はこれまでの授業での実験と異なり、思うような結果ばかりが出るとは限りません。時には同じ実験を何度も繰り返すことがあります。その様なときでも、地道に実験・研究を続けていける忍耐力が必要となります。さらに、実験室は一人で使用しているわけではないので、他の学生との協調性も必要です。