植物は大きな移動能力を持たず、いつも温度や光など環境の変化にさらされています。一方で、私たちの食料や使用するエネルギーの多くは、植物が光合成によって固定した太陽光のエネルギーであり、すべての生命は植物の同化能力に依存しています。植物がどのようにしてこのような能力を発揮しているのか?また植物のポテンシャルをさらに引き出すことで、私たちの生活にさらに役立てることは出来ないか?ということを考えて研究を行っています。
植物が周囲の環境変化に対する柔軟性を示す例として、いわゆる「水草」に注目しています。植物の中には、空気中でも水中でもどちらの環境でも生育することができる水陸両性植物が存在します。この水陸両生植物は、大気中でつける葉(陸上葉)と水中用の葉(水中葉)を環境に応じて作り替えて生育しています。これまで、水中葉は葉の形が変化するだけではなく、光合成の代謝経路をダイナミックに変化させていることを明らかにしてきました。例えば水陸両生植物の1種Hygrophila polysperma(写真1)は陸上ではC4型光合成に近い光合成、水中ではC3型光合成を行います。一見すると止まっているようにも見える植物が、実は細胞内の働きを柔軟に変化させて環境に対応することができるという点に興味を持ち研究を進めています。