日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入しており、心身の健康寿命延伸に向けた取組の充実が課題となっています。生活習慣病などの健康リスクは少なからず不健康な食事と関連しています。そのため個人の健康的な食習慣の形成を支援することは、生活習慣病の一次予防や健康寿命の延伸に大きく貢献すると考えられます。一方、感性を通じて感じるおいしさや味わい、食事場面から得られる幸福感は、私たちの心理的側面を豊かで充実したものにしてくれます。このように食は心身の健康・ウェルビーイング(well-being)と密接に関わっています。
本研究室では、人々の健康的で豊かな食生活とウェルビーイングの向上に資することを目指して、食と健康との関連性に関する知見を基盤としながら、次の(1)~(3)をテーマとした研究を行います。
(1) 行動科学の理論を用いた持続可能で健康的な食習慣の形成:
行動科学とは、人間の行動を総合的に理解し、予測・制御しようとする実証的経験に基づく科学と定義されています。行動科学の理論を援用しながら、持続可能で健康的な食習慣を形成するための方法を探究します。個人や集団の食行動を多面的に分析することで、食行動とその形成要因に関する理解を深め、望ましい食行動変容を促す手立てをデザインし検証します。
(2) 学習科学の視点を活かした効果的な食教育の追究:
学習科学の視点を取り入れて、国内外における既存の食教育プログラムや教材を分析したり、新たな食教育プログラムを開発しその教育効果を検証します。
(3) 食嗜好を含む人の感性とウェルビーイングとの関連:
人の食嗜好や感性が、心身の健康・ウェルビーイングや持続可能な食習慣とどのように関連しているかを解明します。
これらの研究テーマを通して、重層的に食を通じたウェルビーイングの創出に取り組み、健康寿命延伸や個人と社会のウェルビーイング向上の可能性を探究します。