日本の食と農は、農業・農村の担い手不足、輸入に頼りすぎるリスク、環境負荷やアニマルウェルフェアへの配慮といった多くの課題に直面し、近年は「地域に根ざした持続可能なフードシステム」への転換の重要性がかつてないほど高まっています。環境負荷やアニマルウェルフェア等に配慮した農畜産業を実践する生産者も徐々に増えていますが、経済合理性を追求してきた従来の方法に比べると手間ひまがかかり、個別に商品化して独力で販路を開拓しなければならないなど、追加的な取引費用がかかる傾向にあります。経営を成り立たせるには、こうしたコストを適切に価格へ反映できる仕組みづくりや、価値を理解して買い支えてくれる顧客の確保が不可欠です。しかし、その実現は容易ではありません。
現代の食を支えるサプライチェーンは高度に効率化され、私たちは安価で均質な食べものをいつでも手に入れられるようになりました。その一方で、生産者と消費者の距離はますます広がり、「誰がどこでどのように、どんな想いで作ったのか」という情報が届きにくく、商品間の差異が十分に伝わっていない現状があります。結果として、消費者はわかりやすい価格を基準に選びがちになり、生産者どうしの価格競争がますます厳しくなります。
こうした情報の壁を乗り越え、生産者の想いやこだわりが市場で正当に評価され、消費者が多様な食を主体的に選択できる関係性をいかに結び直すか。当研究室では、この問いを起点に、地域に根ざした持続可能なフードシステムのあり方を探求します。