本研究室では、生命科学部の藤村教授と共同で生物における環境刺激に対する応答機構について主に研究をしている。生物は環境の変化に対応するために多くの適応機構を備えており、生育環境に基づいて遺伝子の発現を調節し、微生物においても非常に多くの遺伝子発現調節因子の存在が明らかとなっている。我々は微生物(Pseudomonas putidaなど)や植物における環境ストレス、特に熱と酸素ストレス応答について、その発現調節機構の解析を分子生物学的手法により行っている。トルエンやキシレンのような生物に対する毒性が高い有機溶媒中で増殖できる微生物は、高濃度の有機溶媒存在下で代謝活性を有するため、石油や芳香族炭化水素あるいはハロゲン化炭化水素の分解活性を付与することにより、環境浄化へ応用することが可能であると考えられる。このため、有機溶媒に対する耐性機構についても基礎的な研究を行っている。
セルロースは地球上に存在する有機物の中で最も大量に存在するものであるが、でん粉などと異なり酵素的な分解が容易でない。バイオマスの有効利用のためセルロースを分解する酵素であるセルラーゼに関して多くの研究がなされているが、細菌や真菌の生産するものに比べて、放線菌のセルラーゼについての報告例が少ない。放線菌におけるセルラーゼの役割を調べるために、それらが生産するアルカリセルラーゼについての研究を進めている。また微生物を用いる環境浄化・修復(バイオレメディエーション)は、汚染された環境を回復させる為に必要であり、今後ますます発展が期待される技術である。アニリンは除草剤や薬品製造の原料として用いられ、経口や皮膚からの吸収により中毒を引き起こす環境汚染物質であり、カテコールへの変換過程に関わる酵素の遺伝子は既にいくつかクローン化されているが、酵素反応の詳細については未だに解明されていない。このため、新規アニリン分解菌の分離とアニリン分解酵素の機能解析を行っている。