日本の将来人口推計を見ると、人口は2008年を境に減り始めています。なかでも15歳から64歳の生産年齢人口が減り、65歳以上の高齢人口が増加しているため、都市・まちや人々の生活に影響を及ぼします。例えば、社会保障費や医療費の増加、就業者減少による税収減少、人手不足、空き地、空き家の増加など、さまざまな解決すべき課題があります。これからのまちづくりには、地域、企業、住民、NPO、行政が協働しながら支え合う「公的領域のマネジメント」が求められるのです。
まち・地域は「人」の集まりであり、人と共に成長していきます。そこで将来のキャリアデザインを考える際に役立つ「キャリア・アンカー論(E・シャイン)」をまちづくりに当てはめて考えることができます。まずは「地域の課題(Needs)」「やりたいこと(Will)」「できること(Can)」の視点で考え、この3つが重なる事柄に着目することで、実現可能な企画やビジョンが見えてきます。さらに講座などの「座学」とまち歩き調査などの「ワーク」を組み合わせた「クリエイティブワークショップ」を実践することで、市民協働の設計図を作ります。大分県豊後大野市では、実際にこの理論や手法を活用しながら、「ぶんごおおの未来カフェ」プロジェクトに取り組んできました。学生、会社員、自営業、町内会、PTA、NPO、市の職員などさまざまな立場の市民が、86名ほど参加し、「プランづくり」と「仲間づくり」を目的に、市民協働のまちづくり活動を進めています。これまで2回にわたり、「社会実験」として駅前通りの歩行者天国や空き地、空き店舗を活用したイベントや神楽などを実現してきました。自分たちの「まち」をどのように変えていくのか、地域みんなで共有・協働しながら、まちづくり活動を展開していくことが重要なのです。

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二宮 仁志教授理工学部 都市環境デザイン学科 社会システムマネジメント研究室

  • 専門:社会システム工学、建設プロジェクトマネジメント、まちづくり、都市や地域の再生
  • 掲載内容は、取材当時のものです