1年生から3年生までに、建築設計製図・都市建築企画演習などのいろいろな分野を学んできた演習科目の集大成として、4年生ではグループ課題に取り組み、一つの設計展を催します。課題となる敷地は、大学と協定連携を結んでいる埼玉県毛呂山町で、実在する民家の改修と街のコミュニティを広げる提案を制作し、最終週にプレゼンテーションの予行演習をし、翌週の設計展へ向けて指導が行われます。学生たちはこの課題に取り組む中で、これまでになかったほど、いろいろな条件を突きつけられますが、空想だけでは解決できないような現実的で具体的な問題と向き合いながら、それらが自分たちの設計提案を妨げる障害になるのではなく、むしろ自分たちのアイデアが膨らんでいく体験をし、回を重ねるごとにいろいろな条件を取り扱えるようになるのです。建築は学問の中だけで成り立っているものではありません。社会の中で実際に使い続けられていくため、学問的な専門知識だけではなく、広く、専門家ではない方々とも共有できるような価値観やものの考え方を持つことが大切です。これから人口減少や経済の成熟といった状況を迎える日本は、今までに造られてきた数多くの建物をどのように使い続けていくか、ということはもちろん、耐用年数のある建物を新しく造ることも踏まえて考えていかなければなりません。広い視点で、建築を通して社会を見ていってもらいたいものです。

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伊藤 暁准教授理工学部 建築学科 建築設計研究室

  • 専門:建築設計、建築計画、地域計画、リノベーション・コンバージョン、建築の地域性
  • 掲載内容は、取材当時のものです