河川の生態系を保全する方法のひとつに、「魚道」が挙げられます。魚類や甲殻類等は、エサ、産卵、種類ごとの棲み分け、季節による水温の変化などに対応しながら移動をしますが、堰やダム、頭首工(農業用水を用水路へ引き入れるための施設の総称)などの河川横断構造物によって行く手が妨げられるため、魚道を作って遡上・降下を助けるのです。魚道の中でも、古くから用いられ、その9割を占める「階段式魚道」は、アユやサケなどの流れに逆らって泳ぎ、直立な側壁を好む性質で、比較的水産価値、遊泳能力の高い魚に限られます。これを、今後の子孫繁栄や生態保全のため、多種多様なすべての魚類・甲殻類の移動に対応できるように改善していくことが求められます。また、理想的な流れを作るための呼び水水路を設置するなど、魚をうまく魚道に誘導する工夫や、遡上の際に跳躍して外敵に見つかる危険や、土砂がたまることで流れができづらくなるなどの問題点にも対応し、魚が遡上しやすい魚道の流れを作ることも必要です。このように、対策することや、すべきことは多くあります。河川生態を考慮した川づくりのためにどのようにしたらよいのか、何ができるのか、多くの知見を積み重ね、努力をし、みなさんと一緒により良い環境づくりについて考えていきたいと思います。

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青木 宗之准教授理工学部 都市環境デザイン学科 水工学研究室

  • 専門:水理学、河川工学、環境水理学、魚道、魚類行動、河川生態、流体力
  • 掲載内容は、取材当時のものです