日本には、歴史的木造建築物が数多く現存します。それらを保存し、内部を公開・活用していくためには、地震に対する構造性能の安全性を確保する必要があります。これまで歴史的木造建築物は、職人の経験や勘によって構築されてきました。そのため科学的に明らかにされていない構造性能が多く、耐震診断が過小評価され、建物の耐震補強が過剰になってしまうことがあります。この問題を解決するために、本研究室では、構造工学のさまざまな手法を用いて、耐震性能を一つ一つ明らかにしていく研究に取り組んでいます。

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歴史的木造建築物は、一度建てたら終わりではなく、定期的な改修工事が必要です。その際に建物の部材を解体していくと、傷みやすい部分や構造的に問題がある部分を発見することができます。新しい知見を得ることは、技術の継承やよりよい形で建築物を保存していくために重要な役割を果たします。実際に歴史的木造建築物の耐震性能を評価するためには、最新の機材・装置を使って実在する木造建築物を調査したり、木造建築物を模した試験体を作製して実験をしたり、数値解析による耐震シミュレーションを行ったりします。

私たちの使命は、まだ明らかにされていない歴史的木造建築物の構造性能を解明し、より正確な耐震診断、適切な耐震補強に関する知見を得て、耐震改修現場に役立てていくことです。今後も研究対象である歴史的木造建築物に敬意を払って研究活動を続け、歴史的木造建築物が持つ歴史的・文化的価値の保守に寄与していきたいと考えています。

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高岩 裕也准教授理工学部 建築学科 木造建築・構造工学研究室

  • 専門:建築構造、伝統木造建築物、耐震工学、先端複合材料
  • 掲載内容は、取材当時のものです