「精神保険福祉士」の資格取得を目標に掲げ、ライフデザイン学部 生活支援学科 生活支援学専攻で学ぶ上野玄輝さん。精神科ソーシャルワークの現場を体験することで、授業内容を理解すると同時に、自身の未熟さも感じたと語ります。知識不足を感じたからこそ、学びへの意欲もさらに高まり、目標実現に向けて日々、努力を重ねています。

国家資格の取得を目指して

福祉の勉強をしたいと思ったのは、知的障がいを持つ弟の存在があったからです。弟を見る周囲の人たちが「じろじろ見てはいけない」と意識しているのを間近に感じながら、弟の将来を案じていました。しかし、弟が通う学校を訪れた時、さまざまな個性を持った子どもたちと触れ合い、障がい者といってもひとくくりにすることはできないとわかり、障がいを持つ人たちの生活を支える仕事をしたいと感じたのです。

東洋大学に入学してから、「精神保健福祉士」という資格を知りました。これは、精神障がいを持つ人の生活問題や社会問題を解決するための援助を行う精神科ソーシャルワーカーの国家資格です。東洋大学で4年間学ぶと国家試験受験資格を得られるため、現在は試験の合格を目指して日々の授業を集中して受けています。入学当初から専門的な知識を学ぶと同時に、障がいを持つ人々がおかれている現状も学びました。全国の精神障がい者の数は300万人を超えるそうです。そのような人々に対する偏見や差別があるのは、一般的にあまり実情が知られていないからではないか。そして、当事者もその家族も安心して暮らせるように手助けをしたいと考えるようになり、そのためにはまず資格を取得しなければと努力しているところです。

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実習で自分の甘さを痛感

学外での現場体験を通じて、精神障がいを持つ人が送る生活を、じかに知ることができます。1年生のときは施設を訪問して利用者の話を聞きました。2年生になってからは、アルバイトで東京都の福祉施策の聞き取り調査を通して、精神障がい者の方の自宅も訪ねました。生の声を聞くことで、授業で学んだことを実感することができました。3年生では精神科病院のほか、働くことを目標としてトレーニングを行う障がい者就労移行支援事業所で、それぞれ2週間の実習を経験しました。特に病院では、デイケアのプログラムに参加して当事者の気持ちを想像したり、一人ひとりの生活歴で治療に至るまでの経緯を知ったりとさまざまな体験をしたと同時に、自分自身の考えの甘さも痛感しました。本人と対話するだけで症状を理解しようとしていた私に対して、施設のスタッフは「話をするだけならボランティアでいい。でも、君は実習に来たんだよね」と指摘したのです。現場で学ぶことは大きく、授業で学んだ知識がどれだけ現場につながっているかということを実習を通じて感じました。

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期待に応えられる実力を身に付けたい

授業で知識を得て、ソーシャルワークの現場で実践的に学んで感じたのは、自分の勉強がまだ不足しているということでした。たとえば、実習先の病院で、介護保険について知識不足を痛感しました。病院には高齢者も大勢います。そこでは介護保険の知識は必須です。2年生で選択する「高齢者福祉論」の授業は、自分の目指す資格取得には必要のない分野だと思い、私は履修しませんでした。病院で実習しているときに、介護保険の支払いについて質問されても答えることができず悔しい思いをしたので、4年生になったらあらためて履修しようと思っています。

実習先では職員の方々から「上野さんに相談してよかったと思われるようなソーシャルワーカーになってください」という声もいただきました。一人ひとりの人生に関わる仕事ですから、しっかり勉強して、相談者が望む生活に添った提案をできるような実力を身につけなければと、現場を経験した今だからこそ、もっと知識を深め、実践力を高めなければと感じています。これからの1年間は、ソーシャルワーカーとしてふさわしい力をつけるための努力をより一層続けていきたいと思います。

上野 玄輝さんライフデザイン学部 生活支援学科 生活支援学専攻 3年

  • 所属ゼミナール:稲沢公一ゼミナール
  • 東京都立清瀬高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです