生命科学科

いのちのしくみと、いのちを育む環境を科学する

バイオプラズモニクス研究室(竹井弘之 教授)

ナノテクノロジーを用いた医療・環境用センサーの開発

多くの物質は、サイズが1μm未満になると新しい物理・化学的特性を有する様になります。特に金、銀等の貴金属ナノ構造が最近注目を集めており、医療・環境用のセンサーへの利用が世界中で試みられています。例えば、直径が0.1μmの金ナノ粒子の色は金色ではなく紫色になり、タンパク質や核酸等の生体分子との相互作用によりさらに色が変化するといった特性を有しています。これを利用することにより、少ないサンプルから疾患に関連するバイオマーカー分子の検出がこれまで以上に高感度、かつ短時間で可能となり、医療サービスの効率化が図れることを期待されています。我々の研究室においては、帽子状の金・銀ナノ粒子を真空蒸着に基づいたオリジナルな手法で作製して、抗原抗体反応によるアッセイ(検査)の高感度化に利用したり、環境中の未知の分子をラマン分光と呼ばれる光学的手法によって同定したりする研究を行っています。さまざまな抗原抗体アッセイが存在していますが、我々は比色法および蛍光法の高感度化を試みています。ラマン分光においては、単なる高感度化のみならず、分離や濃縮手段と組み合わせることにより、使い勝手の向上にも積極的に取り組んでいます。実用化を重視していますので、積極的に企業と連携を組み、我々の最新の技術シーズを世の中のニーズにマッチングすることを行っています。また、センサー技術は汎用性が高いことから、医療・環境以外の応用にも挑戦しています。ライフサイエンスの基礎研究に役立てるために、学内の教員から協力を得ながら細胞からの信号伝達物質等の検出を試みています。夾雑物が存在するなかで微小、微量の分子を測定するにはさまざまな困難を克服しなくてはなりませんが、切磋琢磨により自分たちの技術の完成度を高め、新しい基礎知識の取得に貢献できることを夢見ています。

この研究室を希望する方へ

センサーの開発においては、さまざまの分野の知識を貪欲に吸収して問題解決に利用する必要があります。世界で初めて動力飛行に成功したライト兄弟は、自分たちで翼の流体力学を研究し、自らエンジンと機体を完成させ、実際に飛ばしてみせました。我々の研究においても、金・銀ナノ粒子の光学特性の基礎的究明、光学的測定装置の組み立て、さらにはナノ粒子表面で効率的な抗原抗体反応を促すために表面化学の知識を駆使する必要があります。勿論忘れてはならないことは、何を測定するか判断することです。自分たちで挑戦する気概を持ちながら、世界中の専門家と情報を交換することもとても大切です。国内および海外の研究グループとの交流を積極的に進めていますので、あまり人見知りでない方が折角の研究環境を満喫できるかもしれません。最初からなんでもこなせることは想定していませんが、少々不慣れなことに挑戦し、明るく研究に臨んでいけることが重要かもしれません。