私たちの「こころ」や「行動」は、脳内の膨大な神経細胞が形作る複雑なネットワーク活動から生み出されます。行動神経生理学研究室では、動物が物事をどのように感じ、経験から何を学び、どのように行動を変化させるのか、その背後にある「神経回路の動作原理」を解明することを目指しています。
本研究室の柱となるのは、快・不快といった情動とそれを伴う学習・記憶の研究です。また、私たちは味覚や嗅覚といった感覚情報が脳内でどのように「価値」として変換され、行動を駆動するのかを追求しています。例えば、同じ「水」でも喉の渇き具合によってその価値は劇的に変化します。このような内部環境に応じた柔軟な意思決定が、ドーパミン系を中心とする報酬系回路でどのように計算されているのかを、最新の研究手法に基づいて明らかにしています。
また、基礎研究の成果を社会に還元すべく、依存症やストレス、精神疾患のメカニズム解明にも取り組んでいます。モデル動物を対象とした行動実験と、疾患に関連する神経回路の機能異常を多角的に検証することで、病態の理解と新たな治療戦略の構築を目指します。
研究手法としては、光を用いて特定の神経活動を制御するオプトジェネティクス(光遺伝学)や、脳内の活動をリアルタイムで可視化するカルシウムイメージング、高度なin-vivo電気生理記録などの先端技術を導入しています。さらに、得られた複雑なデータに対し、神経計算理論に基づいたシミュレーション解析の手法を組み合わせることで、生物学・心理学・情報科学が融合した多角的な視点から「脳の理解」に挑戦しています。