地球上には、様々な姿かたちの動物たちが存在しています。どの動物も、自分の身体をうまく利用し、多種多様な環境へ適応して、巧みな振る舞いを見せます。動物たちは、どのように身体を動かし、どのように身体を支えているのでしょうか? そして彼らの運動は、どのような身体構造により成り立っているのでしょうか?
動物機能形態学研究室では、主に脊椎動物を対象として、身体の動きと構造について調べています。動物たちの運動パターンや身体構造を詳しく調べていくと、生活環境や生態に適した“進化の工夫”を見出だすことができます。また、それらを動物種同士で比較すれば、近縁な動物たちがどのように変化してきたのかという“進化の道筋”を読み取ることができます。動物の身体構造とそこから生み出される多彩な動きは、彼らの進化の歴史を紐解くアイディアの宝庫です。
当研究室では、主に2つのアプローチで研究を行なっています。
1つ目は、動物園をフィールドにした行動学的研究です。動物園で飼育されている多様な動物種を対象として、運動時に腕や足、尻尾などの身体の各部位がそれぞれどのように動いているのかを解析し、個々の動物たちがどのような状況下でどのように運動しているかを調べています。動画を用いた動作解析や、センサーを使用した運動解析を行なっています。
そして2つ目は、博物館に保管されている標本資料を利用した解剖学・形態学的研究です。
動物園から博物館へ献体された遺体標本・骨格標本を利用して、生物の運動の基盤となる身体構造の解明を行なっています。筋肉の構造や骨の形状を把握し、力学モデルの構築やシミュレーション解析により、それぞれの動物の身体がどういった動きに適しているのか評価を試みています。時には化石標本を扱い、絶滅した動物の身体構造や運動パターンの復元、生態の解明にも取り組んでいます。
動物園・博物館を舞台に、多種多様な動物を対象として研究を進めることで、「多くの種にあてはまる一般法則の発見」と「特定の種にしか見られない一風変わった特徴」の両方を発見していきたいと考えています。また、近年では、上記の研究課題に加え、動物園個体のストレス行動の分析や、血統登録書を用いた死亡状況・繁殖状況の分析にも取り組んでいます。こうした研究を通じ、従来の飼育環境の定量的評価、改善案の提案などを行い、飼育動物の“幸福な暮らし”の実現を目指しています。