DNAの情報から生物学的な老化の度合を捉える研究が進み、将来の加齢性疾患リスクを推定する技術が注目されています。そこで老化と栄養の関係を、エピジェネティック年齢という視点から健康長寿について考えていきます。
加齢性疾患とは、老化に伴って細胞や臓器の機能が低下することで起こる病気で、がんや骨粗しょう症、高血圧、2型糖尿病、サルコペニア(筋肉量低下)、認知症、脳卒中、難聴、白内障など多くの病気が挙げられます。老化はこれらの発症に深く関わる要因です。細胞分子レベルでは、加齢により、タンパク質の恒常性の乱れや栄養代謝障害、幹細胞の枯渇、ミトコンドリア機能の低下、細胞自体の老化、ゲノムの不安定化、テロメア短縮などが起こり、エピジェネティックな変化もその一つと捉えられます。
エピジェネティクスとは、DNA配列を変えずに遺伝子発現を制御・伝達する仕組みのことです。ここではDNAメチル化に注目し、その変化を通して老化を見ていきます。DNAメチル化は加齢とともに変化し、その状態をもとに推定されるエピジェネティック年齢は、生物学的年齢の指標となります。この年齢は運動や睡眠、喫煙などの環境因子、食事や栄養状態といった生活習慣の影響を受けます。特にビタミンCはDNA脱メチル化酵素の働きを助け、遺伝子発現の調節に関わります。皮膚表皮細胞を用いた研究では、ビタミンCが細胞増殖に関わる遺伝子発現を増やし、表皮を厚くすることが示されました。
栄養は病気を防ぐ対策であると同時に、老化の進み方そのものに働きかける可能性を持っています。体の変化を分子レベルから捉え、栄養の役割を理解する姿勢が、健康長寿を支える手がかりになるのです。