世界には1億人を超える難民や庇護申請者、強制移住者、無国籍者などがおり、その多くが低・中所得国で受け入れられています。マレーシアは東南アジアで最も多くの難民を抱える国で、約19万人が暮らしています。しかし同国は難民条約を批准しておらず、難民は正式な就労や教育、医療へのアクセスが制限されている中、生活しています。子どもたちは公教育から排除され、多くがNGOや難民自身によって運営される「学習センター」で学んでいます。これらの施設は、学習の場であると同時に、安心して過ごせる居場所や、友人・ロールモデルとの出会いの場でもあり、保護者にとっても支援や情報を得る拠点になっています。一方で、資金や人材、カリキュラムの不足、教育に対する保護者の理解不足、地域社会との摩擦など、多くの課題を抱えています。
マレーシアの難民の約9割はミャンマー出身で、その多くを占めるロヒンギャやチンなどの人々は、宗教的迫害を逃れて海・陸を渡ってきました。こうした状況を知ることは、決して遠い国の出来事ではありません。日本社会もすでに多様化が進み、今後は難民や移民の背景をもつ人々と共に学び、働き、社会を支える時代になります。日本はUNHCRへの拠出額で世界6位を誇り、マレーシアから「第三国定住」の仕組みで難民を受け入れています。
学習センターで教育を受けた子どもたちは、将来再定住した社会に貢献できる可能性を持っています。教育の有無はその後の人生を大きく左右します。現地で見たことや学んだことを忘れず、世界で起きていることを自分自身の問題として捉え、何ができるかを考え続ける姿勢が大切です。