「フードシステム」とは、食料の生産、集荷、加工、流通、消費の流れをシステムとして把握する概念のことです。生産から消費までのコアシステムは、社会的な要素(政策や法律)や自然的な要素(大気、土壌、水)に埋め込まれ相互に影響を与え合っています。どのようなフードシステムであってもその起点は「生産」にあります。

現在、世界全体では、食料生産による資源の過剰利用と環境負荷について議論されています。日本では、食料輸入の拡大により、海外の農地を間接的に使用しているため、海外の環境への負荷、食料輸送時に発生する温室効果ガスについても考える必要があります。今後、自然環境に配慮して食料生産をする社会に切り替えていくためには、自分の行動が、自然を含む他者に影響してしまう性質「外部性」を内部化する仕組みづくりが必要不可欠です。

経済学では、「自然」を「自然資本」というストックとしてとらえ、毎期フローとして人間に提供してくれるさまざまな恩恵を「生態系サービス」と呼ぶようになりました。生態系サービスには、供給サービス(食料・木材など)・調整サービス(水質浄化、花粉媒介など)・文化サービス(景観、芸術など)があり、供給サービス以外は、市場がないためこれまで無償で提供されてきました。それに対し今後は、受益者が支払いをしていくことを「生態系サービス支払」と呼び、経済システムにおける意思決定の中に「支払」という形で自然を組み込んでいくことを目指します。ただし、生態系サービスに配慮した生産や生産プロセスの改善は、味や見た目だけではその価値を判断することが難しいため、生産方法に関する認証やラベルなどの「情報」が重要な役割を持ちます。

フードデータサイエンスは、より効果的な情報提供のあり方を模索し、食と環境を考慮したよりよい社会の仕組みづくりに貢献することができる研究分野です。

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竹田 麻里准教授食環境科学部 フードデータサイエンス学科

  • 専門:農業・資源経済学
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