消費者がある商品に対して、「これくらいなら支払ってもいい」と思える最大金額のことを「支払意思額(WTP=Willingness to pay)」といいます。また、商品にある特徴が加わった時に、その特徴がない時に比べてどのくらい支払意思額が増減したのか、その変化分のことを「限界支払意思額」といいます。経済学では、なぜ、この支払意思額や限界支払意思額を把握する必要があるのかというと、支払意思額が大きい=その商品(の特徴)の需要の多さを知ることができるからです。つまり支払意思額が増えるということは、その商品に対する需要が増えることを表しています。

支払意思額と消費者需要は密接に関連しているため、支払意思額が明らかになると、消費者需要の解明、効率的な研究開発、生産者の収益増大に役立てることができます。その具体的な方法は、大きく分けて3つあります。それは、ある商品をいくらで買いたいかを消費者にアンケート調査などで直接尋ねる「表明選考法」、実際の消費者の購買データを使って金銭評価を把握する「顕示選考法」、実際に消費者に購買行動を取ってもらい金銭評価を把握する「経済実験」です。それぞれに長所と短所がありますが、最近の消費者需要の研究では、経済実験を使った研究が盛んに行われています。

経済実験の方法には、「選択実験」「オークション実験」「実店舗内購買実験」と呼ばれるものがあります。さらに最新の実験では、仮想空間上にスーパーマーケットを構築し、その中で消費行動を取ってもらう方法である「VR店舗内購買実験」が注目されています。フードデータサイエンス学科では、さまざまな実験的な方法を用いながら、食品の消費者需要や人々の行動を把握し、食に関する問題をデータ分析などの方法で解決することを目指しています。

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中島 亨教授食環境科学部 フードデータサイエンス学科

  • 専門:食品の消費者需要、食料マーケティング、経済実験、農業経済学、計量経済学
  • 掲載内容は、取材当時のものです