機械工学科では物理学、特に「力学」を重視しています。「力学」においてよく知られる現象の「振り子の往復運動」について、「振り子による重力加速度の測定」の実験をする際の目的は、「剛体振り子とその周期の近似式に基づいて、重力加速度gを有効数字4桁以上で見積もり、川越市の文献値9.798 m/s²と比較する」ことです。高校物理の場合は、重りの部分を点とみなして、振り子が触れている「質点モデル」を作り、大きく振れる交点のみを考えます。一方、大学物理の「剛体モデル」では、物体にサイズがあり、それが振れているとみなして、わずかな自転も考慮します。これらを「振り子の周期T」の数式で反映すると、高校物理では簡単な式を使っていましたが、大学の物理ではより厳密に、2つの近似式が入った数式で解析をします。実験方法は、①支点用台座を水平に調整、②糸が位置する目盛りを拡大観察するため、望遠鏡の光軸調整、③ノギスで直径2Rを測定し、補助尺で支点と重り重心の距離lを測定、④振動回数0から190まで10回毎に経過時間を計測し,1回目と190回目の最大振れ幅を観測、⑤支点から目盛りまでの距離bを計測する、というものです。これを「重力加速度g」の式で算出すると、9.795 m/s²という値が導かれ、川越市の値9.798 m/s²と比較をすると、その誤差は0.03%になります。一方、高校物理の周期の式で「重力加速度g」を計算した場合は、9.792 m/s²になり、約0.003 m/s²程度値がずれてきます。この実験から、振り子のおもりの自転の影響は、4桁目程度で出てくるということが分かるでしょう。

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物部 秀二准教授理工学部 機械工学科

  • 専門:精密プローブ加工、超高分解能光計測、高分解能・高S/N光プローブの加工法、光プローブを用いたnmオーダのイメージング
  • 掲載内容は、取材当時のものです